☆side→司



ヤス
「ごめん。遅れた」


「あ?そうか?」


 待ち合わせに指定したカフェのオープンテラスは、なんだかいつもより人が多い気がする。

 額に汗を光らせ、慌てた様子で向かいの椅子に腰を下ろす親友。

 遅れたという謝罪の言葉に、ポケットからスマホを取り出し確認すれば、本当に10分も遅刻してきやがったらしい。

 ヤスにしては珍しい事だ。相手に迷惑をかけまいといつも時間厳守はコイツのポリシーなのに。

 俺が気づかなかったとは言え、連絡を寄越した形跡が無いのは何か切羽詰まった事情があったのかもしれない。



「それよりお前、遅刻はいいけど何かあった?」

ヤス
「いや・・・何かあったっていうか・・・」


「・・・なんっだよ歯切れ悪ぃな。どうせ夏樹だろ?」

ヤス
「ま、まあ」


「なんだよ。アイツどうかしたの?」

ヤス
「うん。いつも通り途中まで送って行ったんだけど、待ち合わせがあるっていうから別れたのに、別れ際に過呼吸起こしてさ・・・」


「・・・ふーん」


 なるほどそれでテンパってたわけか。まったくコイツもアイツも相変わらずだな。



「んで?つってもすぐ治まったんだろ?」

ヤス
「うん」


 夏樹が緊張で過呼吸起こすなんて今に始まったことじゃねえのに、たぶんヤスは毎回パニック起こしてんだろうな。まったくいい加減慣れろ。



「つーかぶっちゃけお前らって今どうなってんの?」

ヤス
「へっ!?」


「へっ!?っじゃねーよ」

ヤス
「いてっ!蹴るなよ」


 ローファーのつま先で軽く小突いただけなのに大袈裟な。



「で?」

ヤス
「・・・」


「付き合ってんだろ?当然」

ヤス
「んなわけないじゃん」


「は?」

ヤス
「付き合ってないよ。何言ってんだよ」


「なんで?だってお前、夏樹に惚れてんじゃん」

ヤス
「ばっ!声デカい!」


 シーッ!と大袈裟に人差し指を口に当てて慌てる様はいったい何なんだ。



「なんっだよー、つーことはまだ告ってもねーんかよあり得ねー!」

ヤス
「だ、だから声デカいって!」


「うっせーな、なんで告んねーんだよヘタレ」

ヤス
「だ、だって・・・まだアイツ立ち直ってないんだぞ。お前のせいで」


「・・・」


 俺のせい?

 あー、なるほど。

 マジわかってねーのなコイツ。



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