カウンター越しに店員へ伝票を差し出すと、会計を済ませようと財布を取り出した。

 その視界の端から、ジャラジャラと音を立てて差し出されたブレスレットだらけの腕。司の腕だ。

 金額をあらかじめ計算していたらしく、丁度いい金額を受け皿に放り出し、此方に向かってドヤ顔をしている。


ユウ
「いいよ。奢るよ」


「だって俺しか歌ってねーじゃん」


 確かにそうだけど、それじゃ助けてもらったお返しができないじゃないか。


ユウ
「さっきの御礼のつもりだったんだけど」


「…そうなの?…んじゃ、だったら一個頼まれて欲しい事があんだけど、それじゃダメ?」

ユウ
「…内容による」


「おっけ。じゃあ説明すっから飯つきあって」

ユウ
「やだ。もう帰りたいもん。後でメールか電話くれりゃいいじゃん」


 なんだかいい加減面倒になってそのまま帰ってしまおうと、司に背を向け店を出ようと歩き出す。

 その空気が読めないわけもないのに、後からくっ付いてきて諦めない司。ウザい。



「ばっかお前、どうせ飯食うなら一人より二人だろ」

ユウ
「知るかよ。帰るよアタシ」


「味噌塩醤油豚骨、どれがいい?」

ユウ
「帰るっつってんじゃん!話聞け!」
(しかも何故にラーメン限定なんだよ!)


「うっせーって付き合えよっ」

ユウ
「うっわっ!?」


 口では負けることが無くとも、さすがに腕力では敵わない。

 腕を引かれるまま、アタシはアッサリと連行されてしまった。





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