「花子ちゃん、ごめんよ。それこっちに運んでくれるかい?」
「いいですよー」

よいしょ、とダンボールに命一杯詰まった何かの部品を二つ重ねて持ち上げる。
予想以上に重かったが、まぁ倒れるほどでもない。

たまたま下でやることがあったので久しぶり(と言っても3日前に水の調達に降りはしたのだが)に降りたら、ここに来てから良くしてくれている人達がなにやら集まっていた。
どうしたのかと聞いてみたら、荷物を運ぶリアカーが壊れたとの事なので私が変わりに運ぶといった。
こう見えても、周りの人とのコミュニケーションは最低限とっているんですよ。

「しっかし、花子ちゃんは見た目に寄らず力持ちだねぇ」
「あはは、若者の力を舐めんな、ってとこですかね?」
「そりゃそうだ」

がはは!と豪快に笑うおじさんにばしばしと肩を立たれるが、紛いなりにも念を身につけているのでなんて事はない。
ふぅっと溜息をついて周りを見る。作業自体は単調なものでそれ程苦にはならなかったが、何分量がある。
全てを運び終わる事には当たりはすっかり薄暗くなっていた。

さて、帰るか。とお礼だと言われ貰った少しの缶詰と飲み水を持って歩こうとすれば、視界の端に見知った黒髪が写った。
そちらの方を向き目を凝らせばクロロとはじめて見る金髪の男の子が何やら真剣な顔をしてきょろきょろと何かを探すように歩いていた。
それが少し気になり「クロロ!」と少し大きな声を出して呼び、クロロと金髪君が一瞬何かを警戒するように当たりを見渡したので「こっち!」とまた叫んだ。
こちらを向いたクロロに手を振れば、クロロは金髪君に短く何かを言い、二人してこっちに来た。

「こんばんは。そっちの子は初めましてだよね?花子って言います。クロロとは話友達?みたいな?」
「あはっ、何それ!オレはシャルナーク。シャルでいいよ、花子さん」
「そう、で?クロロとシャルはこんな所でなにしてるの?」

そう言うと、二人は互いの顔をみやり、クロロが軽く頷いてから私のほうをみた。

「知り合いを探している。今日の朝方から姿を見てないんだ。桃色の髪をした女と金髪の女だ」
「花子さんは知らない?」
「うーん…今日はそんな子みてないかな」

二人があからさまに落胆するのが分かったので、「大丈夫、私も探すの手伝うよ」と続けて言った。
そうすると二人は吃驚したような顔をし、シャルが「え、でも」と言うので笑いながら頭を撫でる。

「時には子供らしく大人を利用するのも賢い選択だよ」
「利用って…」

二人が呆れた顔をしたが、それすらも笑い飛ばす。

「それに二人より三人の方が見つかる確立もぐんっとあがるでしょ?」

クロロの顔を見ながら言えば、クロロは何かを考えるような素振りをした後「分かった。花子も手伝ってくれ」と言った。
うん、素直な子は大好きだ。

「じゃあその子達の特徴と名前教えてくれる?」
「分かった」

その後クロロに探している二人の特徴と名前を聞き、二時間後にまたここで落ち合う約束をしてクロロ達とは別の所を探しに行く事にした。
少し高い所に立って円をする。
50、60、70メートルと広げていくと150メートルらへんでクロロに聞いた特徴と一致する気配を感じた。
二人以外にも数人の気配がして苦笑しつつ目的の場所目掛けて走り出す。


まぁ誰一人纏をしていないから問題ないんだけどもね。