追憶
夢を見たんだ。
ずっと遠い昔暑い夏の日、向日葵畑を走り抜けて太陽みたいに笑う君がまだこの世界に居た時の夢を。
決まって君はこう言うんだ、
「しょうがないから私がヒロトのお嫁さんになってあげる」
それからフフッと笑って手を繋ぐんだ。
最初から最後まで、いつも同じシナリオだから俺覚えちゃったよ。
ただ、
夢で会う代償かのように
君の声が俺の記憶の中から日に日に消えていく感覚を覚えた。
忘れたくない、仕草も、声も全部忘れたくない筈なのにいつの間にか少しずつ消えていくのだ。
君がこの世界から居なくなってしまってから10年が経つ。
今ではもう、君がどうやって笑っていたのかさえも記憶に靄がかかってしまって思い出せない。
次に夢をみた時に君と走った向日葵畑の夢をまたみたい。そしたら夢の中だけでは声も笑った顔も思い出せるんだ。
「また会いにきたよ輝、」
太陽の光があたって眩しい笑顔、
俺、ずっと此処に居てもいいかな。
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