消えた君
『僕が大人になったら迎えに行くからね、だから泣かないで』
『うん、待ってるね、ずっと待ってる』
「サイテー」
「ちゃんと迎えに来たじゃないか」
迎えに来た?呆れて何も言えないわ。
私がおひさま園を出てから数年、あの日の言葉を信じて今までずっと新しい父親と母親と生活してきた。今の両親に不満は無いけれど、ヒロトが居ないことで心にポッカリと大きな穴が空いていた。あの言葉を信じて信じて待っていたのに、やっと来たと思ったらグランと名乗る変な格好をしたヒロトが目の前に現れたのだ。
「見つけたと思ったら君が雷門イレブンにいるなんて、予想外だったよ」
「それで引き抜きってこと?」
「連れ去る事も出来るけど輝が納得しなきゃ意味がないんだ、だから」
(馬鹿じゃないの、行くわけないじゃない)
「輝ならわかってくれるよね?父さんの崇高な考えがさ、」
私の髪の毛を優しく触るヒロトはあの日と変わっていない筈なのに、笑ってる顔も変わっていないのに
「貴方、誰」
私には違う誰かに見えたの。
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