記念日
俺の母さんはすっげー変わり者で、いつだって優しい人。
そんでもってヒロトさんの奥さん。
まだ新婚でラブラブな時期な筈なのに、俺を養子にしたいとヒロトさんに頼み込んだらしい。
赤の他人なのに輝さんは俺を本当の息子みたいに接してくれる。俺の本当の母親より、ずっとずっと心地よかった。時にその優しさがウザいと感じたこともあるが、大変感謝している。
俺も輝さんが大好きだけど反抗期真っ只中の俺はどうしても輝さんを「母さん」と呼ぶことが出来ないでいた。
「わぁっ」
「似合ってるよ、マサキ」
「……」
雷門中に入学する事になった俺はヒロトさんと輝さんに新しく新調してもらった制服をきてみせた。見せたくなかったがヒロトさんがどーーーしてもっどーーーしてもっていうから仕方なくだ。
特に輝さんには見せたくなかったんだよなーだってほら、現に輝さんの方を見れば大きなキラキラした瞳にいっぱい涙を溜めてうるうるしてる。涙脆いんだ。
「うっ、マサキぃ…本当に行っちゃうの…??」
「だーーっ!!離してよ!」
ぎゅうううって力いっぱい抱き締められて苦しい、ていうか豊富な胸が当たって当たって……
「ヒロトさんも輝さんになんか言ってやってくださいよぉ!!!」
「輝、」
「俺最近輝と愛を育むどころかハグさえもしてもらってないんだけど…いいな…マサキ…」
「アンタ真剣な顔で何言ってるんだ!!!」
「その…何ていうか、一生会えなくなるわけじゃない、し、休みの日とか帰る、し。だから…ケーキとかまた作ってよ、」
「うっ、!うん!マサキが好きなものばっかり食べさせてあげる!」
「俺、母さんの作ったケーキ大好きなんだ」
「!!!」
約束だからねって言って自分の部屋に向かってドタドタと廊下を走る。
言ったぞ…!結構ナチュラルに言えたから気付いてるかな、自然と自分の口元が緩んだのがわかった。
「マサキ帰ってくるってさ、だからそんなに泣かなくていいんじゃない?」
「うん…」
「輝まだ泣くの?」
「だって…」
「抱きしめようか?」
「いらない」
「ハハッ酷いなぁ」
「マサキが初めて私のこと母さんって呼んでくれたの…嬉しい…」
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