「恋がしてみたかった」
自分とソイツしか居ない静かな音楽室、窓を開けてソイツは言った。
ソイツが開けた窓のずっと奥、雲一つない澄んだ蒼い空が目に入りウザイくらい天気いいなー…とかコイツの名前なんだっけ?
なんて思いながら「ふーん」って適当な返事をする。
ていうか何でコイツこんな話俺にしてんだ?
ほぼ初対面な相手に窓開けながら「恋がしてみたかった」って、面白過ぎるだろ!ポエミーか。
「今ポエミーだとか思ったでしょ」
「なんでわかったんだよ」
「なんかいつもと雰囲気違うね、言葉遣いも態度も最悪」
「お前もストレート過ぎて最悪だな」
フフッてお互いの小さな笑い声が静かな音楽室に響く。
「ていうか俺早く当番終わらせて帰りてーんだけど」
「知ってる、顔がそんな感じ」
山積みになったプリントを2人で分けて音楽室を出た後、名前だけでも覚えといてやるかなって気が向いたから「おい」と後ろにいるであろうソイツに声を掛けたがいつの間にか居なくなっていた。
「あの野郎…プリント…全部置いていきやがったな…!!」
消えたソイツの代わりにプリントがドンッと丸々残されていた。