私はいつもベクターの後を追いかけた。好きで好きで堪らなくて、この気持ちを伝えたくて。でもベクターにその気持ちが届く事はなく、いつも軽くあしらわれる始末。
ある日ベクターに言われた言葉が私には痛過ぎて、悲しくなってバリアン世界を飛び出し時空の狭間でうずくまった。
どうしたら気に入ってもらえるのだろう、ベクターがよく口にしている九十九遊馬とアストラルを潰したら褒めてくれるかな…私の事認めてくれるかな…
そんな事を考えながら半ベソでゆっくり人間世界へと歩み寄った。
人間というものは単純で、少し優しくすればみんなが馬鹿みたいに私を「優しい人」と称した。
九十九遊馬も例外ではなく、同じように私を仲間と受け入れて「ココも大切な仲間だぜ!」と言い、疑う事はなかった。楽勝。
暫くしてオレンジ髪にアメジストの綺麗な目を持った「真月零」と名乗る好少年が転校してきた。
肌の色も、髪の色も、体型も、声も、性格も全く違うけれど、私はすぐにベクターだと気付きバレないようにバレないよう少しずつ「真月零」に近付いた。
それから「真月零」はいつも私の側にいて、私に好きだと言った。
手を繋いで隣を歩いて、偶に走って。
甘い物好きじゃないくせに、私に合わせて僕も甘いの好きですと嘘ついて一緒にケーキ食べに行ったり、本当は面倒臭くてしょうがないだろう女の子の長い長いショッピングにだって笑顔でついてきてくれた。
「真月零」と一緒に過ごす時間が長くなるにつれて最早当初の目的なんてどうでもよくなってしまう位に幸せだ。
でも、どうやら私は強欲なようで「真月零」が「ココ」って呼ぶ度に胸が痛み、心の中で黒いモヤモヤがぐるぐると渦巻いた。本当は、本当の私の名前を呼んで欲しい、「ココ」の時と同じように抱き締めて欲しい。
だから
だから
貴方の大好きな私の中のココを殺して
勇気を出して言うんだ、ずっと言えなかった事。
「本当の私を見て」
それでももし貴方が私を受け入れてくれる事があるのなら、
人間のフリしてる時みたいにキスして。
ネタ提供:いぬひこ様