昔彼女は言った。
外の世界に出たいと。

病室のベッドから小さな窓から見える切り取られた外の景色を眺めて一日を過ごす。
華奢な身体がベッドから降りて動かないせいか最近はよりほっそりと健康的じゃなくなった気がするのは、きっと気のせいでは無いのだと思う。
腕をみると点滴の針を刺した跡なのか青くあざの様になっているのが目にとまった。

「あっ、見ちゃだめっ」

俺の視線に気付いたのか彼女はサッと上げていた袖を下へ下げた。

「痛いか…?」

「いたいよー!でも、大丈夫!」

「そうか」

「カイト!退院出来たら何処かに連れて行って」


何処へ行きたい?そう聞き返そうとしたが彼女は生まれてから病院を出たことが無かった事を思い出し口に出すのをやめた。
ハートランドに連れて行ってやろうか…でも刺激の強いアトラクションに乗ると彼女の弱い心臓が止まってしまうかもしれないな。
この季節ならやはり海の方がいいのだろうか、泳げないにしても眺めているだけで楽しいかもしれない。


「海はどうだ」

「海!いってみたかったの!海って波が凄いんでしょ?でも海の水を別の容器に入れると容器の中の海の水は波が止まってしまうって聞いた事がある、不思議だよね?」


「そうだな」

「海に行くの、約束ね」

「ああ、」



俺は嬉しそうに笑う君の手を取り小指と小指を結んでゆびきりをした。



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