「あの、私もうこの服でいいや…2人とも折角選んでくれたのにごめんね」

「そうか、力になれなくてすまない」

「やはり気に入らなかったのか?」

「ち、違うよ!」

ことの発端はアリト。
私の着ている服が私に似合ってなかったようで、似合ってないと笑われた。
私は悔しくてドルべとミザエルに服を選んでくれと頼んだ。
正確にいえば1番無難コーディネートをチョイスしてくるドルべに頼んだのだが近くで話を聞いていたミザエルが「一肌抜いでやろう」と自信満々に乱入してきた。
正直ミザエルの趣味はどうかと思ったが、その気持ちが嬉しいので一緒にお願いする事にした。の、だが。
ミザエルの選んだ服はどっかの貴族か!ってついつい心の中でツッコミをいれてしまった。
肝心のドルべはというと迷いに迷って迷いまくって結局コーディネート出来なかったらしい。
このままいくとミザエルのこの貴族服を着なければならない、それだけは避けたかった私は仕方なく今の服のままでいいと言ったのだ。

「要するにだっせえんだろぉ」

「だからちがっ…あ、ベクター」


後ろを振り向けばさっきまで居なかったベクターがいた。
ベクターの服装をみると黒くてシンプルでかっこいい。ベクターに頼めばよかった。
(あ、でもベクターの事だから頼んだって茶化されて終わるか…)

「わっ」
ベクターが私に手を差し出した瞬間ベクターが持っていた白い紙袋が私の顔にバフッと当たった。

「なにこれ?」

「服欲しかったんだろぉ?」


ベクターの顔を見ると口元が確かに笑っていた。
絶対変な服買ってきたに決まってる。
そう思っていたのは私だけではなかったらしく、ミザエルが私の前に出てベクターに突っかかっていた。

「どうせお前の事だ、変なもの入れているに決まっている。ココをまた泣かしてみろ、タキオンドラゴンの餌食に…」

「あん?」

「わ、わぁあ!」

「どうした!やはり変なものが…」

「可愛い…!」

ベクターから貰った紙袋の中には白くてふわふわしているワンピースが入っていた。
右胸の方に大きめなリボンが付いているだけのいたってシンプルなワンピースだが、凄く可愛い。
こんなに可愛いワンピースをベクターが私にくれるなんて思ってなかったからとても嬉しい。




私はワンピースを両手いっぱいでぎゅっと抱きしめてワンピースに顔を埋めた。

「ありがとう、ベクター!」
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