前に彼女は言った。
「私はお父様やお兄様達の為なら犠牲になれる」と。



幼い頃に一度だけ会ったことがあり、俺の記憶に残っている彼女は男兄弟にも関わらず、大人しくて優しい女の子で争い事を何よりも嫌っていた。

数年後次に会った彼女も相変わらず大人しくて優しかったが1つだけ大きく変わった部分があった。それは顔立ちや身長などといった外見的に…ではなく、心が。そこだけが以前と全く違っていて別人のようだったのだ。
争いを拒んでいた彼女は復讐の為にデュエルをするようになり、完全にトロンの駒と化していた。



しかしそれでも俺は知っている。彼女は人を傷つける事に対して苦しんで、父親に駒としか思われていない事に対して悲しんで涙を流している事を。










「お父様やお兄様達の為なら私は犠牲にだってなれる。たとえお父様が私を捨て駒だとしか思っていなくても私はお父様の復讐の為に役に立ちたい」
デュエルに敗れ力尽きた彼女を抱き寄せて前に彼女が言った言葉を思い出す。
辺りに散らばった彼女のカードをオービダルが拾い集めて彼女の手にそっと持たせてやると閉じられていたはずの目から涙が流れた。
「私…捨て駒の役割果たせたかな、役に…たてたかな…」




俺がずっと思いを寄せていたココは復讐に殺された。
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