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もしも君が嫌でなかったら、手を繋いでくれないだろうか。良成くんはそう云って、手を差し伸べた。
彼の手はひどく震えていた。以前のそれとは比べ物にならないほど細く、少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうなほど衰えた手に、触れる。
「ありがとう」
良成くんは頬を引きつらせて、嬉しそうに目を細めた。
ああ、彼はもう笑うことさえもできないのだなと思った。
「良成くん」
「なあに」
「わたしはここにいる」
「うん」
「そばにいるよ」
「うん」
「…ずっとよ」
うん、大丈夫、置いてはいかないよ、と良成くんは頬を引きつらせて云った。
彼の悪い癖
彼は、嘘をつくと笑うのだ、いつも。