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「未来の不幸がこわい」

鮫島さんはひどく真剣な顔をしていた。
それはつまり、と先を問うとつまりは今の自分が行動することで生じるのであろう未来での不幸があまりにもおそろしくてたまらない、ということらしかった。

「たとえば俺が歩くだろう」

鮫島さんはひどく真剣な顔をしていた。
たとえば俺が歩くだろう。そうして小石を蹴るだろう。そうして小石が転がるだろう。そうして小石が車に弾かれるだろう。そうしてわずかに車の軌道がずれるだろう。そうしてわずかに車は軌道を戻すだろう。そうしてわずかにタイミングがずれるだろう。そうしてずれたタイミングで、もしかしたら人が撥ねられるかもしれない。

「そんなことを考えると、俺は一歩も動けない」
「なんとまあ、」
「恐ろしかろう」

鮫島さんはひどく真剣な顔をしていた。

「なんとまあ、まさにそれは」
「風が吹けば桶屋が儲かる」
「いや違う」
「、」
「先走り」
「そんな」
「未来に恐怖を抱くなんてまさにそれはただの」
「言わないでくれ」
「ただの杞憂ではありませんか」

鮫島さんはひどく真剣な顔をしていた。
鮫島さんはひどく真剣な顔をしていた。
鮫島さんはひどく真剣な顔をしていた。



20120501


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