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良成くんの指はすごくうつくしい。
きめのこまかい肌や、なめらかで程好く削られた爪、強くのびるその毛さえもが、わたしを魅了する。
「ピアノ、引ける?」
わたしがそう訊ねると、良成くんはこたえた。
「引けないよ」
白い掛け布団の上に交差していたそのうつくしい指が、互いをこすりあわせるように前後する。
関節の浮くその指は、女性のように思えたけれども、たくましいさまはまさに男性そのものだった。
「きれいな指だね」
わたしは良成くんに笑いかけた。
「ありがとう」
彼は困ったような顔をした。
おかしなことを云ったかな、と良成くんを見つめると、彼は「いま、いちおう、喜んでる」とぎこちなく云ったので、わたしはまた笑って、良成くんは困った顔をした。
20120310