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とてもくるしそうに、握りこぶしにぎゅっと力をいれる瞬間がある。
それまでは鬼でも無ければ仏でもなくかといってキリストのようなとかそうでもなくて、ひどく無表情に無感情に機械のようにわたしの腕や腹や頬や太ももを殴ったり蹴ったりするのだけども、ある瞬間を過ぎるとふと悲しそうな寂しそうな苦しそうな泣きそうな顔をしてこぶしをぎゅっと握るのだ。
その瞬間に名を呼ぶと、さっきまでわたしの身体にめり込んでいた骨の手がゆっくりとわたしを包み込む。
痛いか?って聞かれて、いたくないよ、平気だよって答える。
お前には俺しかいないもんな。そう言って震える肩と暖かすぎる温もりになんともいえなくなって、さっきまでのことなんてどうでもよくなってしまう。
痣は毎日増えて、消えてもすぐに新しくできて、痛くて何も食べられなくなる日だってしょっちゅうだけど、でも最後には必ず痛いかって不安そうにいって、抱き締めてくれるから、わたしはいたくないし平気なのだ。


20120104
  0127 更新


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