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午前5時の空は青かった。
だから泣いた。


たぶん、みんな知らないのだと思う。早朝の、空の青さ。空気の透明さ。世界の、冷たさ。
ベランダに出て、大きく息を吸った。

鼻から肺へと回る空気は冷たくて、なんだか浄化されていくような気がする。
昼のわたしは悪に近い。

毎日、早朝、わたしはこれに浄化されている。

はす向かいのアパートの2階に若い夫婦が住んでいる。
朝はたぶん食パンを1枚食べて、昼も夜もコンビニで済ましてしまうような、そんな夫婦だ。
彼らは恐らく、素晴らしいセックスの仕方を知っていても、素晴らしい早朝の世界を知らないでいるのだろう。

隣の席の山田は音楽が好きらしい。
どうやら、唸るビートが俺を震わせる、らしい。就寝時間が毎日午前3時らしい彼はきっと素晴らしい音楽の奏で方を知っていても、素晴らしい早朝の世界を知らないでいるのだろう。


なにが幸か不幸かなんて、わたしにはわからない。
ただ。
わたしは早朝の世界を知っている。
世界が呼吸をする、唯一の時間を知っている。
だから生きていけるのだ。
わたしも、世界も。



今日の早朝も空は青い。



20110724


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