ぎゅうと引かれる手にほっぺが熱くなった。自分よりも大きな手は、ごつごつしてて、男の人の手で。


「なまえ?」


名を呼ばれハッとする。顔を上げてなに?と言えば出した声はワントーン高くて、更に恥ずかしくなった。

「なに照れてんだ。いつも通りで良いだろ」
「い、いつも通りって!だって、手、手が…!」
「ん?これか?」

ひょいとわたしと彼を繋いでいる手を挙げてニカッと笑う。デートなんだから当たり前だろ、と。かあああと自分でも分かるくらいに赤くなって、恥ずかしくなった。そんなわたしを茶化すように彼は笑う。

「ん?なんだ、いつもの威勢はどこいったんだ?」
「〜〜っ、うっさいわ!」
「そうそう、それで良いんだよ。やっぱそんくらい反抗してもらわなきゃな」
「ああああ分かった!なら反抗してやろうじゃないの!」

バッ、と握ってた手を切り離す。ふんっと両手を組んで隣を歩いた。ランサーはそうされるとは思ってなかったのか、両目を見開きながら手を見て、わたしを見て。そして納得したようにああ、と言ってからなんの躊躇いもなく、腕を組んできた。

「こっちのが良かったか?」

筋肉質な腕がわたしの腕を絡み取る。声にならない声が出て、ランサーはニヤニヤ笑う。耳まで真っ赤になったわたしを馬鹿にするように、息を吹き掛けてきた。


「や、やっぱり手を!手にしよッ!!手に!」
「えー、こっちが良いっつたのなまえじゃん」
「言ってない!手繋ぎたいです!わたしはランサーと手繋ぎたいの!!」

ランサーはくすくす笑う。そんなに熱弁されちゃあ堪んねえなあと笑う彼を見て、自分が今めちゃくちゃ恥ずかしいことを言ったことに気が付いた。

「は、謀ったなこの軟派男…!」
「なんのことやら」

また繋がった手に先ほどからうるさい心臓がまたうるさくなった。しずかにしなさいよわたしの心臓。きゅ、と精一杯の力で握るとランサーの足が止まってこちらを向く。顔を見ることなんか出来ないから、拗ねたように唇を尖らせてそっぽを向いた。


「ああ、そういや」


思い出したように彼は口を開いた。恐る恐る視線をあげる。離れた手はするりと耳に触れたから反射的に逃げようとしてしまうが、動くな、と優しい声色で言われてしまったら従うしかない。
暫くするとよし、と言う声と髪の毛をかきあげる手。

「うん、やっぱな。お前に似合うと思って買って正解だった」

触れてみるとイヤリングが耳に付けられていた。シンプルな形をしている。きっとランサーが似合うと言っているのだから、変ではないのだろう。

「それじゃあ行くか」

ほれ、と差し出された手に渋々自分の手を重ねる。ランサーは良くできました、と言って指と指の間に指を絡ませてきた。ああもう、ついてけない。何もかもが、早すぎて。

「らん、さ」
「あ?」

けど、これだけは。
これだけは言わなければならない。


「……ありがとう」
「おう。礼はキスで良いぞ」
「!返す!いらんっ!!」
「冗談だっての」
「ううぅぅう………!」





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ありがとうございました!
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