世界と契約した大馬鹿者。
自分を捨ててまで護りたいと、それが幸せなんだと彼は吐いていた。
「――…はぁ、」
指先に力を籠めるとごつごつとしている指と絡まる。私が力を入れたことが伝わったのか、倍の力で返してきた。
「痛いか?」
「…ん、まあ、…これなら、大丈夫」
はあ、ともう一度息を吐いて力を抜く。不思議なことに私には余裕があった。なのに、彼には余裕がない。どういう心理か、あの皮肉屋がこうも余裕がないとは。
ゆっくりとナカに入ってくるそれを受け入れる。痛みよりも快感よりも何よりも、彼の表情が気にかかった。
「――ぁ、んちゃ、あっ」
それでも体は正直というやつか。名前を呼ぶはずだったのに口から漏れたのは喘ぎ声。だが私が呼んだ事は気付いたらしく、目元に唇を落としてきた。
「どうした、なまえ」
「はあ、あ…んっ、あーちゃあ、」
「ああ、私だ」
褐色の肌が触れる。伸ばした手が彼の輪郭をなぞる。浮かされた熱のせいではっきりしない意識でも、神経は研ぎ澄まされたように繊細だ。
「…?」
「…あーちゃーが、不安、そうだったから」
不思議そうな顔をしていた彼にそう言ってへにゃりと笑うと、私を抱き締めた。繋がっている状態でのその行為は、彼自身を更に奥へと突き進める事になる。だらしがない声がまた私の口から漏れた。
どくりどくりと押し寄せる快感の波に飲まれないようにと必死に理性を押し留める。
「私は、… 、は、」
震える声は何故か。
押し留めた理性で彼の頭に手を伸ばす。手を伸ばして、触れた。
「救えない…!何も、なにひとつだってッ!」
「……あー、ちゃー」
「きっと私はいつかの世界で君すら殺してしまう…!」
それが怖いんだと。
未来の英雄は声を殺して泣いた。
それが大馬鹿者の弱さだ。周りの者を救いたいと願うばかりで失うことを最も畏れる。例え畏れていようが、いつかは、
「だいじょうぶ、だよ」
私だけは貴方の側を離れないから。貴方を裏切らないから。貴方を愛し続けるから。
応える声などなかった。
だってそれは叶わないと解っていたから。ただ、また始まった淫らな行為に私達は没頭し続けた。
結局救われない大馬鹿者達かう様リクエスト
ありがとうございました!