「ランサーランサー、」
「ああ?」
「今ハートの欠片見逃した」
「な…!」

どこだどこにあった!と言いながらも回転したり走ったり草むらを切ったりしているのは緑の少年な訳でして。せやあ!などと随分気合いの入っている声を出している。
漸く見付けたハートの欠片にランサーは満足して次の場所へと進もうとしていた。無論1人プレイ用のそのゲームをランサーがやっているということは私は見てる役という訳なのが、眠い。とにかく眠い。本来立場は逆だと言われようがランサーの膝を借りている。特に何も言ってこないし、まあ良いだろう。それよりこの眠気をどうにかしてくれないか。

「なんだ、なまえ。ねみぃのか?」

ゴマダレー、と画面から聞こえてきた。いや勿論空耳なのですが。眠たいには眠たい、しかしランサーとの時間を睡眠に割くとは如何なものだろうか。

もう半ば夢の中だった。
画面からの音だけはちゃんと聞こえる。ぴゅーぴゅーぴぴゅーとオカリナの音が聞こえた。


途端、音が途切れる。


不思議に思い無理矢理瞼を開けると真っ暗なテレビ。それと頭が落ちた。痛くはない。体が浮く。動く。柔らかい場所に置かれる。隣に何かがある。


「ほら、腕枕してやるよ」


そう言って伸びてきた逞しい腕に頭を乗っけた。固い、寝心地悪い。けれども良い感じに温く、離したくない。更に体を近付け、密着する。だって本当に良い感じに温いんだもの。
さらさらと髪の毛を弄られるがさして気にもならず、鼻にかかる吐息は少しだけ擽ったい。

「らんさ」
「くぁ…あ?」

向こうもあたしの眠気が移ったのか、欠伸をひとつした。瞼を開けると想像通り眠たげな顔がドアップ。めちゃくちゃ近い。

「……おやすみ」
「おー、あんま寝ると夜寝れなくなるから気を付けろよ」
「ん、」

完全に体をランサーに委ね睡魔を迎え入れる。ただ意識が落ちる前に何の音もなく、額に触れるだけのキスをされたことだけは感触でわかった。



微睡む世界に二人


なすお様リクエスト
ありがとうございました!
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