なんだっけ、確か、わたしが「買い物行きたいな〜」とか言う呟きを彼はきっちり聞いていたというか、聞き逃さないでいてくれたというか。

「服が欲しいんだっけ?」
「う、うん…」

ランサーは確かな足取りで今女の子達の流行りのお店に向かう。片手をぽっけに突っ込んでわたしの少し前を歩いていた。周りから視線を集めるランサーは言わずとも格好いいし、外人さんだからだと思う。なんだか隣を歩いていて申し訳なくなった。

「…なあ、なまえ」
「ん?」
「俺が選んで良いか?」

そう言ってランサーは着いたお店の服がいっぱい並んでいる方を指差した。わたしは「え、」と顔を上げる。ランサーはニッと笑っていた。良いよ、と許可を出すと彼は奥に進んで服を漁り出す。ガチャガチャとハンガーに掛かってる服を右から順に見ていく。そんな姿をぼんやり眺めながら、ランサーの後ろ髪を眺めてた。引っ張りたい。


「………これだっ!」


まるで子供のように声を張り上げランサーは一つの服を取り出した。周りの人がビクッてなってたし。そんなランサーが選んだ服はオシャレなカーディガンでちょっと拍子抜け。

「…アロハ選ぶかと思ってた」
「ちょ、俺そんなイメージかよ」
「だってランサーいっつもアロハシャツじゃん」

クスクス笑うと頭を掻いて「ちゃんと選ぶ時は選ぶ」だそうだ。

「じゃあ、それも買おっか」
「試着とかしなくて良いのか?」
「良いの。だって、ランサーが選んでくれたんだもの」

そう言うとランサーは「おう」と笑ってカゴを持ってきてそれを突っ込んだ。勿論荷物もちをすると申し出たのは彼の方だ。


ランサーと一緒に服を選んで、それを試着してを繰り返していたら一時間以上が経過していた。

「んー、ありがとうランサー」
「気にすんなって」

ぐーと体を伸ばして大きな袋を持ってくれているランサーに礼を言う。彼は相変わらず笑顔だった。

「よし、じゃあわたしの奢りで喫茶店行こう!」
「あ?別に良いのに」
「いーのいーの。わたしがおごりたいの!だってじゃなきゃフェアじゃないでしょ?」
「俺はなまえとデートできただけで楽しかったぞ」

ぱちくり、と目を見開いたわたし。
ランサーは「え?」と目を見開く。

「…………」
「…………」
「………っ」
「ああ、お前鈍感だから気付いてなかったのか」
「だ、だって…!」
「よし、なら俺が良いことを教えてやろう」

ぐい、とランサーは腰を曲げわたしの顔に顔を近づけてきた。それはもう、鼻と鼻がぶつかるんじゃないかってくらいの距離まで。


「男と女が二人っきりででかけりゃなんであろうが"デート"になるんだぜ?」


きゅ、と唇を結んで肩を縮こませると、ランサーは盛大かつ爽快に笑い声を上げた。ぽかん、と状況を理解出来てないわたしを見てランサーは笑い声を噛み殺す。

…からかわれてる?

「…ふ、く…小動物みてえ…!」
「な…っ!」
「そう怯えんなって。まだ取って食おうなんざ思ってねえから」

わしゃわしゃとわたしの頭を乱暴に撫で回すランサー。
おや?なんだかむかついてきたぞ。

「こ、子供扱いすんな…!」
「してねえよ」
「…うそつき」

つーん、と唇を尖らせ明後日のほうを見た。なんというか、我ながら可愛くない。


「だーかーらー」


ランサーはわたしの手を取る。驚いて、そちらを降り返った。そこに居たのはやっぱりランサーで、けど、真剣な眼差しで。

「子供扱いなんかしてねえよ」

ぐい、と体を寄せられ抱きしめられる。荷物は持ったままなので背中にやわらかい袋が当たっている。此処が何処だか理解しているのだろうか…!人々が行きかうデパートだ。もう一生ここに来ることはない…という訳にはいかないのだが…っ。

「ちょ、ぅ、」
「お子様なんざにここまでしてやる道理はねえ」
「らん、」
「なんならここでキスしても良いぞ」

それは困る。かなり困る。

「わ、分かった…!から離して、喫茶店行こう!」
「…っく、はいよ」

案外容易にランサーの体は離れた。そしてわたしが言った通りに彼は喫茶店へと向かうのだ。


わたしの手を引きながら。


「あ、」
「…な、なに」
「まだとって食おうとか思ってねえけどよ」
「………」
「あくまで"まだ"だからな。お前が可愛過ぎたらすぐ食っちまうから気を付けろよ」


一体わたしに何を気を付けろというのか。



たべちゃいたい。



由良さまリクエスト
ありがとうございました!
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