神に仕える身として性行為というのは決して快楽を得る為だけに行う行為ではないということ。



「…だと、わたしは思います」
「……それがどうした?」

ベットに座りいきなりそう言ったわたしを訝しげに見る綺礼。だがしかし、まあ、問題点というか。

「それって非生産的な行為は認められないってことですかね」
「そうでもなかろう。性行為自体確かに快楽を得る事もできるが、違う意味を齎すこともありうる」
「ほうほう。…へー」
「だから、それがどうしたと訊いているのだ」

べっつになんでもありませんよー、と言ってベットに寝転がる。シスター服なので凄く寝ずらいのだが。枕に頭を置き本来の寝る体制を取る。眠いかと言われればそうでもないのだけれど、綺礼の匂いがするベットに伏せると不思議とまどろみ始めた。一体どういう事だ。綺礼は睡眠臭でも纏っているのか。
そこで寝るな、と遠くで聞こえる。ああそうだ、お風呂入って、服脱がなきゃいけないんだ。じゃなきゃ皺になってしまう。なのに、だるい、眠い、動きたくない。こんなシスター居るって知ったら信教者様達はなんて言うだろうか。本職は代行者なんだけど。…まあ、こんなにだらけられるのは綺礼の前だけだ。けど服は脱がなきゃいけない。仕事服は流石に、ああでも服部屋で、脱ぐだけでいいか。布団があるから寒くはないだろう。

体を起こしてただでさえ脱ぎにくいシスター服を座りながら脱ぐという暴挙にでる。が無理だったので一度立って、脱いで、放置。寒いので布団にくるまる。


何かが近づく音がきこえた。
まあ勿論、この部屋に動くものなどひとつしかいない。


「…お前は何処でも脱ぐのか?」


なんて失礼な。まるでわたしが痴女みたいではないか。綺礼はどうやらわたしが脱いだシスター服を拾っているらしい。流石です。

「…きれいの前だけだよ…」
「……」
「きれいだから、ぬぐの」

閉じていた瞳をうっすらと開ける。驚いたような顔をした綺礼と目が合って、面白かった。
伸びてくる手が肩に触れる。だから、布団を取り去った。

「だってきれいは、わたしの体見ても、何も思わないでしょう?」

ちらほらと素肌に残っている傷跡。代行者として生きてきた時から生傷は絶えないし、死に至るほど大きな怪我だってした。だからこの体はもう、

「きれい」

ただの女として生きていくためじゃない。

「いつまでもわたしの傍にいてね」

別にそれを気にしたことなどなかった。ただ、ちょっとあー、いいなあ。と思う時はある。綺麗な体を欲しいと思う時もある。けど、それだけだ。

ばふん、ともう一度ベットに倒れこむ。ああなんか、馬鹿みたい。


「綺麗だと思うが」


聞こえた感情の無い声に驚く。
わたしの傷を癒すかのように動く手。

「それはお前が生きてきた証だろう?それを綺麗と言わずしてなんという」
「…、ありがとう。お世辞でもうれしい」
「世辞などではないのだがな」
「ううん、良いよ。だって男の人は綺麗な人のが良いに決まってる」

多分綺礼は本当に綺麗だと思ってくれてるんだと思う。けど、それは、異端者同士の傷の舐め合いにしかならない。

「お前を抱きたいと思う程度には、美しいと思うが」
「……じゃあ抱いてよ」

冗談半分、本気半分。
そんな視線を送れば綺礼はなにやら思案した後に、こう言った。

「それは快楽以外の意味を齎すな」
「…そうだね。でもわたし体だけって嫌」
「……全く、我が侭なやつだ」

そう言うなり唇を塞いでくる綺礼も頭の螺子がぶっ飛んでいるのだ。とりあえず好きだと言ってみた。綺礼はわたしの体を押し倒してそうか、と言う。服なんて下着だけなわたしだから、大きな手が体を直接触るたびになんとも言えぬむず痒さが体を支配した。

「…んっ、」

太腿を撫でる手に体が反応する。くすぐったい。耳朶を甘噛みした口から漏らされた言葉に胸が締め付けられる。ついでに子宮も疼いた。やだわたしったらはしたない子。

「ねえ、きれい。さわって」
「…お前には恥じらいという言葉はないのか」
「きれい焦らしすぎて、なんか泣きそう」

本当に大切にされてるみたいで。
哀しくなってくる。
けどわたしが言ったら本当に触ってくれる辺り綺礼は優しい、と思いたい。唇を噛んで声を我慢するが、息をしようとしたらなんとも言えぬ声が口の端から零れる。

「…っ、…ん………はあ、」

あつい場所に侵入した指を乱暴にナカを掻き回したりしてわたしのよがる姿をその空虚な瞳に映している。何を思ってこんな娘を抱いているのやら。

「…は、…」
「なまえ」

ぐい、と突き立てられる堅い指。ちょっと痛くて目を瞑った。

「今の顔は良かったぞ」
「…っ、このっドS…!」
「そういうな」

彼は困ったように眉を潜めた。まるでこんな愛し方は望んでいないと言わんばかりに。短い髪の毛を引っつかんで頭を抱き寄せる。丁度胸と胸の間に唇が触れて、舐められた。

「きれいの舌あっつい」
「お前の体は随分と冷えてるな」
「んー、けど、あっついよ」
「ナカはな。どうせ直ぐ熱くなるさ」

頭が持ち上がって下半身に手が向かう。キャソックに手を伸ばし、上を肌蹴させた。綺礼は下から自分のモノを取り出す。ああほらまた、きゅ、て。疼いた。肌蹴させた前から手を入れて背中に回す。素肌が触れ合う。


「―…んっ、」
「…力を抜け、入らんぞ」
「はあ、あ…あ、声、出しても、良い?」
「構わん」
「―――…んむっ、はあ、きれ、い」

眉を寄せながら腿を掴んで自らの肩に乗せる。ギシリギシリとベットが軋む。

「くあ、あ…きつ、」
「私の台詞だ……っ、」

相当つらいのか、汗を浮かべる綺礼がなんだか面白かった。けど、それよりナカを犯している異物の圧迫感が半端ない。

「…ふ、あ…ふ、ふ」
「…っ、何を、笑っている」
「きれいの、おっき、い」

ぐん、と入ってくる。それで全部入ったのか、肩から足を下ろし息を吐いていた。そうしてわたしの額に唇を落とす。

「掴まっていろ」
「はあ、い」

ぎゅう、と綺礼の逞しい胸板に顔を押し付けるように息を吐いて、舌を這わせた。ぴくりと一瞬揺れたが、それが合図だったように動き出す。器用に片方の手はわたしの背中を抱いて。

「う、ぅ、く…きれえ、あ、んあ、!」
「っ、」
「きれえ、きれっ、すき、」

かもよ。

「きれい、ん、あ!」
「黙っていろ…!」
「ん、んん…!」

湿った肌がお互いに吸い付く。あ、イくな、と思ったから一際強く綺礼に抱きついてもう一回愛の言葉を囁いてやった。ぎゅう、と締め付けて綺礼が離れる。あ、ナカに出さなかった。

「…は、あ」

瞳を閉じるとまた抱かれる感覚。けれども、もう、十分だ。

「…ありがとう」
「………」

綺礼は何も言わない。それが、彼の優しさなんだ。その手の平で子供を寝かしつけるように背を叩く。目蓋が落ちてから、数秒後。やはり綺麗だと、うわ言のように彼は呟いた。



堕落せぬ行為



氷空さまリクエスト
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