(どんな妖怪だろうが、狂戦士の前では紙屑でしかない)


ずきずきと痛む左腕。流石、聖杯戦争を良く知っている。サーヴァントに敵わないと悟って令呪を持つあたしを狙って来やがった。ああ気持ち悪い、バーサーカーに理性がないとは言え主を守るという使命がちゃんとあって良かった。でなければ×んでいたのかも知れない、ふざけやがって。


ひとつひとつ部屋を回る。馬鹿みたいに広い屋敷だ、しらみ潰しにしなければならない。
また同じ扉を開ける。月明かりだけが照らす狭い部屋、その中にあった小さな姿を見つけて、ほくそ笑んだ。中に入ってその幼い幼い手を包み込む。

「大丈夫だよ、もう、怖いのは何もないからからね」

何も映していない虚無の瞳をぱちくりさせてあたしを見た。握っている手をみて、あたしの顔をみて。それを何度も繰り返して、ようやく口を開く。

「…お姉ちゃんだあれ」

動かない左腕をぎこちなく動かし、抱き締めて、抱える。左腕はほぼ添えているだけなのに、なんて容易い。そのまま自分の肩口に頭を押し付け部屋を出た。ずっと傍らに控えていた黒い騎士にありがとう、と伝えると初めから居なかったかのように、消えた。


****



真っ暗い道を歩く。宛がない訳じゃない、目指す場所は決まっていた。

遠くで、爆発音と何かが崩れる音、消防車のサイレンが聞こえる。ただ、それだけ。もくもくと立ち上がる煙に一瞥してまた足を進めた。


「桜ちゃん…!」


目的の場所に着く前に目的の人物がやって来た。片足を引き摺らせて、曇りかかっていた瞳に少しだけ光が灯る。

「…暫くは、いや間桐の家には帰らないほうが良い。アパートくらい借りれるでしょ?なんならバーサーカーはこのままあたしが貰うから、教会に言って二人とも保護してもらっても構わない」

そっと抱えていた女の子を降ろして視線を合わせ微笑んだ。

「…でも、出来るならアパートが良いな。あたしも住む場所がなくて困ってるしバーサーカーも出来るだけおじさんが持っててほしい。辛いかも知れないけれど…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

声を荒げて状況が理解できないと彼は言う。
彼女は眉を下げ困った顔をした。

「…大事な事は言えない。けどあたしは皆を救いたい、ただそれだけ」

そう言って小さな女の子の頭を撫でて立ち上がる。そして、男を見据えた。


「あたしの名前は海南。お願いだから、協力してほしい」

その後は悲劇の始まり
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