ゆらりと中庭に立つ少女。
その少女の名を、呟こうとした。
「アンタさあ、」
けれども、それは少女によって止められる。呆れたような、ガッカリしているような声。
「何があっても海南の味方でいるって言ったよなあ?だから、あたしは我慢してあげたんだよ」
「――…っ、てめえ、は」
中庭に立っているにも関わらずその少女の顔は見えない。
「なのにこの様か」
「俺は今からでも海南を救う」
あははっ、と。少女は笑った。
「なら海南を殺してやれよ?」
「――…!」
「それが今の海南を救う唯一の手。余計なことは考えちゃだめだぞ。安心しろ、あたしは最後まで海南を愛する」
「どういうことだ」
少女はただにんまりと笑う。
海南の皮を被ったそれは、海南の身体を抱き締めながら。
「きっと今海南は死にたがってる。もしあたしを使って今の現状を終わらせれば海南は永遠に夢の中で自分を呪いながら生き続けてしまう。死にたいけれど死にたくない、から殺してほしがってるんだ。それも、お前の手で」
だから、殺してやれと。
それはそう言いながら、姿を消した。
悪魔の囁きを正銘される