翌日、アインツベルンと遠坂の会談が行われた。
互いがライダー滅ぼすという目的で協定を組み、互いが有効な条件を出し合う。
アインツベルンは言峰綺礼を冬木市からの国外追放。
遠坂はセイバーの宝具であるエクスカリバーの使用を禁止。
不承不承ながらも承諾したが、納得できないことがアインツベルンにはあった。
「…貴方のサーヴァントが連れ帰った子と話がしたいわ」
ピクリと表情が固まる時臣氏。自分のサーヴァントであるアーチャーを見るが彼は我関せずと言ったように壁に凭れていた。
独断行動にしても異様だ。この男が人を連れ去った?一体、なぜ。
「呼ばれてなくとも登場海南ちゃんでえっす」
かつりと足音を鳴らしながら少女はやって来た。にこりと笑うその姿は昨日となんら変わりはない。
ただ予想外の人物に時臣は目を見開き動揺する。しかし、直ぐに彼の付き人である言峰綺礼が言葉を発した。
「昨夜、アーチャーが私の元に負傷者であるとこの少女を連れてきたので治癒を施しました」
「……ああ、そうだな。我の命令で治療させた。師である時臣のサーヴァントの命だ、逆らえる筈はなかろうなぁ」
何か問題でも?とアーチャーは鼻を鳴らし時臣を嘲笑う。
「まま、あたしもこの通り本調子じゃあないんでちゃっちゃっと済ましちゃいましょ」
「…そうね」
しかしアイリスフィールを庇うように舞弥が一歩出た瞬間に少女が怯む。……当然といえば当然だ。昨夜、腕の関節を外した張本人なのだ。トラウマにならない筈がない。
こほん、と小さく咳払いをして背筋を伸ばす。
「とりあえず、今の話盗み聞きしました。全部却下で」
バッサリと、少女は言い切る。何を言っているか、とその場に居た人間は思ったのだろう。
スッ、と服の裾で隠れて居た右の甲を晒し少女は話しだした。
「例え貴方達が協定を組んだところで何も変わりませんよ。ライダーを倒す?ふざけ倒せ、ばあか。ライダーを倒すのはぎ…………アーチャーだから。それでも協定を組むならあたしとバーサーカーはライダーと協定を組む。それでも構わないというなら何も言わないけど」
不利になるのはどっち?
少女は笑顔で語る。
「待って。貴女は、サーヴァント二体と契約して平気なの?」
「この通りですが。あたしはどうやら魔力の塊みたいなものらしくですね、魔力だけはあります。魔力だけは」
両方の手の甲を見せれば違う形の欠けた令呪。少女はなんてことないように、言ってみせた。
「ぶっちゃけるとあたし全員と契約することだって出来ますよ、絶対に」
驚愕。
けれども少女は続ける。
「質問はお仕舞いですか?案外、あたしも忙しいんですけど」
「―…貴女は、」
聖杯に何を望むの?
そういった器に少女は笑う。
周りを見渡して、言った。この戦争の救われ方を。
「何も望みませんよ?だって、あたしは聖杯を壊すためにここに居ますし」
正当な自己結論