エロ注意


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下ろされた場所は冷たく固い。
けれどもその冷たさは今のあたしにとって気持ちいいものだった。

「…っ、ディル」
「…こんな所ですまない」

違う、違う。
もうきっとあたしは彼の顔を見るだけで彼に惚れるだろう。だから、見ない。頭を霞める青が。

ゆるりと体を這う手に体が震える。目を瞑っているから、次に何がどこに触れるのか。

「……ディル、ムッド、止めよ、…ね?あたしは、へいき、だから…」
「その割りには随分辛そうだが」

否定はできない。
だって、辛いもの。
唇が触れた。先程のとは違い降れるだけの、口付け。

「俺を見てくれ」
「…、っいや」
「ならこのまま続けるが構わないか?多分、魅力された方が楽だとは思うが」

「ディル、は…どっちがいいの」

このままのあたしを抱くのと。
嘘の恋心を持ったあたしを抱くのと。

「――…」

息を呑む声が聞こえた。
ただその表情はあたしが目を瞑っているから分からない。怒っているのか、とか。不安になる。少しだけ目を開けようかなんて思ってしまった。


途端何の予告も無しに触れられる胸。ぁ、と声が零れた。

「―…貴方が誰を想っているかは知らない」
「でぃ、る…?」
「けれど、今夜だけは俺の女になってもらう」

服の中に手を入れられ下着のフックを外される。無論ゆるゆるになった下着は本来の役目を放棄することになった。

「―…っ、ん」
「そういえば、まだ名を聞いてなかった」

そういえばそうだ。
あたしは知っていたけれど、彼は知らないのだ。そんな関係で抱こうなどと、馬鹿げている。

ぽつりと、零れるように自らの名を差し出す。
すると彼は何度かその名を呟き、吟味した。硬くなった頂きを摘ままれ背筋に痺れが走る。ずきりと傷んだのはどこだったか。


それが合図だったかのように彼は荒い口付けを始めた。手は相変わらずあたしの胸を揉んでいる。唇が離れたと思ったら首筋に生暖かい感覚が走る。いきなりだったからか、一際大きい声が出た。

「視界を無くすと感じ易いらしい」
「…は、ん、今いらない情報…!」

事実あたしは怯えていた。
どこをどう触れられるのか、分からないから。ランサーとは一度…否、正確には二度、したが、どちらともまともにした記憶がない。というより、多分。触れられるのは、

「…っ、!」
「考えことをする余裕があるのだな」


ちくりと、鎖骨付近に痛みが走る。一度や二度ではない、何度も何ヵ所も。いつの間にか着ていた服は全て脱がされていた。ああもう手際良い。

「……ディル、」
「なんだ、海南」
「はやく、して」

彼はあたしの名を気に入ったらしい。あたしははやくこの行為の魔力供給という目的を果たしたい。だって、じゃなきゃ、塗り潰されそうで。

ディルムッドの這いずる手が無くなった。顔も、どうやら一度退いたようだ。居るという感覚はしているのだが。

ゆっくりと置かれた手のひら。
それは、早い心臓の上。

「これが、」

見えなくとも分かる、そこにあるのはあたしと彼を繋ぐ証。

「――いっ、!?」

ぐっ、と。
爪を立てられた。

「海南を、縛っている」
「はあ、ぁ…、?」

それも一瞬の出来事。手のひらは退かされ、ディルムッドもあたしの上から居なくなっていた。どういう事かと不思議に思っていると掴まれる腿。びくりと、体が跳ねた。


「――ばっ、でぃ、ぁ、っなにしてっ!」
「随分と濡れているのだな」


信じられない、というか、信じない。
その、あの、な、舐めてる、という。
確認したくて目を開けたいけれども見たくはないというか、堪らない羞恥心と熱がぐるぐる回ってどうにかなってしまっているような。

「う、ぁ、やん…っあ」
「は、…ん。こうしてもらったことはないのか?」
「しゃべ、っちゃ、ぁだめ…っ!」

息を吹きかけるように話され足が痺れて震える。ぐるぐると回る熱が熱い。沸騰してしまうほどに熱い熱が下半身にたまる。未だかつて感じたことのない未知の快楽に無意識に体を逃がそうとしてしまう。無論、ディルムッドの手により阻止されてしまうのだが。

ぐちゃぐちゃという卑猥な音と、ちゅ、という軽いリップ音が聞こえる。ディルムッドの熱い舌がソコを這う度に頭が蕩けて忘れてしまった方が楽なんじゃないかなどうにかなってしまいそうだ。


なんで、こんなに、


「…は、ぁ、んあ、やぁああッ…!?」


ガリッ、と。
明らかに今までのものではない固い何かが、秘豆を、かじっ、た。

「…イったか」

くったりと肩の力を抜くあたしを見てそう呟いた気がした。今はそんな呟きだって、頭の中に反響する。

「まだこれからだというのに」

クスリと笑う声が聞こえた。さぞその顔は妖艶なんだろう。
ああ全くその通りだ、あたしだけがきもちよくなんか、なれない。


ただ身構える。
そんなに固くからなくて良いと言われたが、身構える。

「……っ、」
「怖いのなら目を開けろ」

珍しく、命令口調のディルムッドに驚いたが首を横に振った。それは嫌だ、と。
理性を無くしたら本気で何をするかわからない。


「――ぁ、」


ゆっくりと挿入される熱さに息を吐く。優しく、ゆっくりと解すように。入った、ときいた時はなんとも言えない気持ちが心を支配した。

「動くぞ」

ゆっくりと上下に動かして、ギリギリまで抜いたかと思えば勢い良くナカを突いて、探るように奥へと入った先が、一点に触れた瞬間に背中に電撃が走ったかのように仰け反る。

「は、あ!あん、や、」
「ここ、か」

何がここだというのか。
それでも初めて“与えられる”快楽に頭がおかしくなる。だってあたしの初めては相手の意識がなかった。だから、気持ちいい快楽に


「も、わけかんなっ、い」


整理的な涙か、それとも罪悪感からか。なにをあたしはあんあん喘いでるんだ、ばかか。そう頭の片隅では思うものの大半を締めている考えは「もっと」ときた。これはもう、淫乱と言われても仕方がないレベルだと思う。


「海南っ」
「ん、あっ」
「海南…ッ!」
「はあ、あん、あっあ、でぃる、ぅ、あああああっ!!」


ぐり、と。
ここ、を押し付けられ頭が真っ白になった。吐き出されるディルムッドの熱にまた体が震える。それでも、熱はまだまだ冷めない。


「はぁ、はあ、ディル、ムッド…!」
「っ…海南、!」




ぱちりと。
かち合った瞳が、理性を壊した。


ぁ、もっと、シて…、っ忘れ、させ、あ、んっ、
…その言葉、後悔はするなよ、海南

救われない行為
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