真っ白い世界から浮上するように彩られる世界。青や紫、黄色に赤に橙、世界が色付く。

「?どうした、海南」

青があたしの顔を覗くように話し掛ける。あたしは首を傾げた。

「ん?夢、見た…?」
「はあ?なんだお前目開いたまま寝てたのか」
「え!?うそ!?」
「ククッ…そりゃああんな顔になるわな」
「え!?どんな顔してたの!?ちょ、凛も笑うな!」
「ぷぷく…いえ、知らない方が自分の為じゃないの?」
「はあ!?桜ぁ!!」
「え!?いえ私は…!」

ぎゃんぎゃん騒いでるとセイバーが呆れたように特に変な顔はしていなかったと教えてくれた。ちくしょう騙しやがったな…!




「ランサーッ!」




世界から色が、消えた。
黒白の世界に、ふたり。


「…ランサー…?」


恐る恐る手を伸ばして、何時ものように触れようと頑張った。頑張った、のに。ギラリと光る瞳がそれを拒む。



「■■■、■■■■!!■■■■、■、■■■■?■■■―■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――!!!!!




消えろよ」







「―――――ッ!!!!」



声にならない声が喉を焼く。
ぼやける視界が視界を奪う。闇へ黒白の世界へあたしを誘う。


「ぁ――っはく―、」


ばくりばくりと高鳴る心臓が全身へ血を送る。視界を綺麗にしようと腕を動かしても動かない、どうしてどうして、なんで。回らない頭で考えても答えなんか出るわけない。身をよじっていたら床が無くなり、背中を打った。

その反動かは知らないが、焼かれた喉の奥から競り上がるものを呑み込む。左肩が痛い。痛い、痛い熱い、いたい熱い。どうして、どうしてなんでランサーはランサーはランサー、ランサー、ランサーは熱い熱いランサー熱い、ランサーランサーは、



「大丈夫、か?」


本当に恐る恐る、と言ったような声が聞こえてきた。ゆるりと顔を上げればくらりと目眩がしてただでさえ熱い頬に熱がたまる。思わず視線を逸らした。だって、そんな、の。うそ、だ。
ぽたりぽたりと流れ落ちるのはなんだろうか。

盗み見るようにその貌を見た。
心配そうに此方を見る目に心臓が破裂しそうになる。頬に触れた手が、あたしに触れた部分が熱く美味しく熟れたように赤くなる。

小さく音を綴る綺麗な唇に見入った。

どくりどくりと脈打つ心臓。その理由は一体何なのか、理由が、ありすぎて。
瞬きする度何かが落ちる。何となくそれが気持ちよくて、もっともっと空にしたくて、熱い体を冷ましたくて。

多分、あたし、は。



「あの、」



あと一度、


「その、熱があるようなのだが、」


だけ、


「何か冷やすものを、」
「……ご、め」
「……?」

「ごめ、ん」


何に対しての謝罪だったか。
そんなこと、覚えてもいない。

ただその唇から発せられる音が、動く唇が、妖艷で、熱くて、気持ちよくなりたくて、綺麗で。


「……は、……っン!?」


唇に噛み付くよう重ねた。左肩の痛みなんかぶっ飛ぶくらいに気持ちよくて、開いている隙間に舌を捩じ込んで、舌に乗って流れ落ちる感覚に指先が痺れて。

「はあ、あ、んっ、」

ポタリポタリと床に染みが出来る。理由は不明。

「――…っ、」

頬を紅潮させるこの男の貌に頭が痺れて。縋るように動く右手で背中に腕を回せば後頭部を押さえつけられて。

「……ン、あ、はあはぁ、はぅ、ん」

酸素を吸う時間すら惜しくて、一秒でも一瞬でも触れていたくてランサーそれだけじゃあ足りなくなって、もっと体を密着させてランサー背中に侵入するゴツゴツした大きな手が触れていくところから融けていく感覚に体が痺れて――…。






「―…他の、」

離れた唇はもうぐちゃぐちゃに濡れていた。

「男性を想うのは関心しないな」
「…ぁ、」

力が抜けた。
大分楽になった頭でたった今しでかした事、これからしようとしていた事を考えたら顔が真っ青になる。

「、っ!!ごめ、」

今彼の顔を見てもなんの感慨も浮かばない。ただ綺麗だなあ、と思うだけだ。

「いや、俺も少しやり過ぎた…。余りにも美味な魔力故に、」
「いやいやあたしが悪かった!、本当にごめん!」

濡れている口元を見るだけで少しだけ気恥ずかしい。だから早めに拭いてしまう。

「体の方は」
「あ…うん、大分楽になった…かな。肩、も」
「そうか…ソラウ様が治癒魔術で治して下さった」
「そうだったんだ…」

彼が立ち上がりあたしを立たせ、何処かに行こうとする。まだ汗ばんでいる手を優しく引かれ、ほんの少し恥ずかしかった。

霞む青に変わる黒
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