色々話し合った結果綺礼はこの件について調べてくれると言った。調べることで答えが得られるのかは別としてですね。ていうかそんな訳でして。
「……むー」
衛宮家の門とにらめっこ。多分てか絶対警鐘なるんだろうなー。
『何してんだ』
不意に声をかけられ後ろを向くが勿論人は居ない。からまた前を向いて門とのにらめっこを開始した。ランサーははあ、とひとつ溜め息をついてそんな事をしても意味はないと言った。知っとるがな。
「……怒られるかなあ」
どうなんだろ、セイバーはともかく…あ、でも理由をキチンと話せば士郎だって分かってくれる筈だ、そうだそうだ、なんだ何も問題ないじゃないか。士郎はキチンと分かってくれるさ。
そう思ったら悩んでることが馬鹿らしくなってさっさと門をくぐった。そして戸を開ける。
「ただいまー」
シーン、と。
誰も居ないのかな、とか思って上がる。
「ねーえー、誰か居ないのー?」
「海南!無事かっ!?」
「あ、…ぇ」
「…近くでサーヴァントの気配がします。隠れていて下さい」
「そうね、ここは私達に任せて貴女は「……なんで、居るの」
だから、計画などしても上手くいかないのだ。
頭を抱えてその場に蹲る。駄目だ、これは駄目だ。士郎ならともかく凛が怒らない筈がない。
「ちょ、良いから隠れて!もうこの屋敷に入ってるんだから!」
「…しかし妙ですね、敵意を全く感じない」
「………ランサー」
「―…くっ」
しゃがんだままに片手を挙げる。笑い声を堪えるように彼は現界した。
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それはもう見てるこっちがハラハラする程だった。
正座をしてぎゅうと萎縮し肩を震わせる海南。心なしか、その頭には垂れてる耳が見える。うるうると瞳を潤ませるその姿はなんとも言えぬ庇護欲をそそられれた。
一方的だった。
最初はどうしてと問い詰めていた遠坂凛だったが、海南は分からないの一点張り。ではランサーの前のマスターは誰だと訊けば分からない。分からない分からない分からない、馬鹿の一つ覚えのようにそればかりを繰り返す海南に凛がぶちぎれた。
言わずとも散々だった。魔力ないのにとからどうしてだとか魔術師じゃないのにとか士郎殺されかけたのにとか、なんかもう凄い剣幕で怒鳴り付けてくるものだから海南は声も出せずに段々と小さくなり最終的にはこの有り様だ。
そして凛が出した結論がこれだ。
「令呪を破棄しなさい」
んでもって、今まで項垂れていた顔を上げ初めて反論した。
「それは無理!」
「―…ハッキリ言わせてもらうけど、そういうの目障りよ。士郎以上に魔術の知識もなく、寧ろ今まで魔術の存在すら知らなかった貴女がマスターになるだなんて、どういう手違いかは知らないけど。魔力すら供給されてないんじゃないの?」
そして漸く原因の男に話を振った。最初彼は屋敷が珍しいのか、キョロキョロ見回してたが直ぐに飽きたらしく胡座をかいて二人の様子を観察していた。
「あ?いや、ぶっちゃけソイツの魔力は一級品だと思うぞ」
「…は?」
「与えられるというより“増えていく”感じに近い。まあ俺と嬢ちゃんの相性が良いだけかもしんねえが…」
「ちょ、ちょっと待って!この子に魔力なんて、」
「無い、か?確かに表面上ただの一般人だがどういう訳か、コイツの中には濃密な魔力が流れていやがる」
海南は目をぱちぱちさせながら自分の体を色々と見た。が、わからない。何もわからない。
「けどこれであたしは聖杯戦争と無関係ではなくなったよね?」
海南は嬉しそうに笑いながらランサーに振り向いた。
「よろしくしゃしゃス!」
堕ちていく前提