その後は目まぐるしく時間が経過していった。土蔵から光が溢れでたかと思えば金髪の美少女が飛び出してきて全身青タイツと相対してるし。何やらヤバげな呪文唱えたと思ったら赤い槍が美少女の肩貫いて血出すし。なんなんだ一体、とか被害者面してみる。
最後に、ランサーが去る際あたしの方を一瞥したので手を振っておいたが。
只今遠坂凛さんが色々説明してます。あたし聞いてませんが。
「…海南?」
「…え?なに?」
「だから、教会に行くんだって」
「えー、あたし行かなきゃ駄目なの?」
ダルい、眠い、めんどくさい。そして可能ならば此処で転がりながら今の気持ちを表現したい。
「その子、魔術師じゃないわよね」
「え?あ、ああ。海南は全うな一般人だ。……多分」
「うおーいなんで最後曖昧したこんちくしょう」
「魔力の滓も感じられないものね。…それならば教会に預けなさい。一番安全だわ」
そんな事を言い出した凛をムッとした表情で見つめる。
「やだ!」
「やだって…命に関わるのよ?」
そんな遊びのような生ぬるいものじゃないの、と彼女は真剣な面持ちで答えた。それでもあたしの中で意見が変わることはない。教会に預けるだって?……むむ、悪い気はしないのは何故だ。しかし半ば監禁状態になるんだろうなあ、やっぱ。寧ろ殺されそう。
「却下。一般人は一般人なりに考えがあります。因みに士郎君共々が命に変えてあたしを守ってくれるそうなので、あたしは寝ます。教会には明日一人で赴いてみせます、ではおやすみなさい!」
言ったもん勝ちである。
逃げるようにその場を走る。いきなりの行動に呆気をとられたらしいが、何かにつけて盛大に真っ正面からぶつかって鼻打った。
「〜〜っ!誰だっ壁作ったやつ!」
「生憎ながら私は壁ではなくてね」
「しね!あたしは寝る!」
「そういう訳にもいかんな」
右にずれれば右にずれ。左にずれれば左にずれ。元よりここは一本道の廊下だ。あたしがこの先に進む方法はコイツを倒すしかない…!
「あー!何あれ!」
「君は私を馬鹿にしているのかね」
「ちぃ…!」
威嚇するが依然状況は変わらず。腹を括るしかないのか…、とか思いつつ今日は絶対に行かないと決めてるのだ。
「ぜぇったい今日は!行きません!」
「そうか」
今日は、これ以上血を見たくないから。
そこを退かないならばあたしにも考えがある。そうだ、これは君が悪いんだよアーチャー。
士郎と凛には聞こえない声で、囁いた。
「そこ、退いて。エミヤ」
揺れた隙に横を走り抜ける。
後ろを振り返ることもせず、寝床に向かった。
怖いもの知らず