2月2日_???





いち、気紛れだった。
に、辿り着けないと思ってた。
さん、好奇心からでした。




入った瞬間異様な匂いに顔を顰める。言わずとも判るだろう、臭い。ギシギシ悲鳴をあげる床とあたしの心臓。うるさい程にどくんどくん脈を打つ。何もしていないのに汗がでる、息が詰まる。

入ってはいけない。入ってはいけない。入ってはいけない。入ってはいけない。入ってはいけない。見てはいけない。見てはいけない。見なければいい。見なければいい。見てはいけない。


それでもこんな森の中を歩いてきたのだ、それ相当の報酬が欲しい。大丈夫だ、大丈夫。この先に何があるかは分かってるじゃないか。分かってるなら、大丈夫だ。



部屋に入る、フリーズ。



チカチカ点滅する視界の中、それだけは、綺麗に見えた。

吐き気?違う、なんだこの感じ。喉に何かがつっかえたような、吐き出したいのに吐き出せない気持ち悪さ。いっそ吐き出したいのに、それが許されない。


目を離せ、離せ。離せ。


全く回らない頭。一歩、一歩、体が動く。頭の中を支配するのはどうすれば良いのか。止血?止血ってなんだ。どうすれば良いんだ、アレに触れて良いのか。ぐるぐる回る。そうだ脈、脈を。いや生きてる生きてるから、はやく。


はやく、なんだ?



「――っ、」



ギン、と頭を鈍器で殴られたような感覚に陥った。喉に手を突っ込まれたように異物が吐き出される。急いで部屋から出た。鼻から目から肌から汚染されていく、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、気持ち悪い。



「かはっ、げぼっ、はぁ、あ、」


視界に映った赤が赤が、赤がアカアカあかが、


「――う」


競り上がってきたものを呑み込み、口元を拭く。涙で視界がぼやける。乱れた呼吸を整えるよう、意識を集中させた。



「なんっ、で」


この程度、片腕が無くなった人間、これから起きることに比べれば、ああ駄目だ慣れなきゃ、慣れなきゃ。慣れなきゃいけない、助けなきゃ、あたしが居なくとも助かるだろう、でも、慣れなきゃ助けなきゃ血に慣れなきゃこれから起きる度こんなんじゃ、誰一人として救えない。



なれなきゃいけないんだ。

望まれない使命
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