まるで流れるようだった。

海南の唇を塞いでいたのは一秒にも満たない。直ぐに離して早く来いよ、と言いランサーは去っていった。意味がわからない。まだ感触が残っている唇に触れて、眉を寄せた。



***



その後はまるで何もなかったかのように時間が過ぎた。海南もランサーも、何も変わらず。


変わったことと言えば、

「凛士郎ん家住むの?」
「ええ。…協力関係にあるのだから、その方が楽かなって」
「いいねえ」

ニヤニヤと凛を見るランサーに警戒する士郎。とりあえず脛を蹴っといた。

「変なことしたら駄目だよ」
「しねえって。同意の上なら「ランサー」……へいへい」
「それと、海南。悪かったわね」
「?なにが?」
「一昨日のことよ。アーチャーが海南のこと襲ったって…」
「気にしてないよ?それよりアーチャー居るの?」

ひゅ、と現れるアーチャー。依然あまり良くない痛い視線だ。

「ねえアーチャー、話があるんだけど…」
「ほう」
「んー、あんましきかれたくないからなあ。凛、アーチャー借りて良い?」
「え?ええ。構わないけど…」

ありがとう、と言ってアーチャーの手を握ろうとした。が、

「俺も加わったら駄目か?」

伸ばした手はランサーに絡めとられる。

「だめ」
「もし襲われたら?」
「襲わないよ」
「どっからそんな自信が沸いてくるんだか…」
「大丈夫だもん」
「じゃあ約束しろ。アイツに近付くな」
「だが断る」

するりと抜けて廊下に出る。アーチャーも着いてきてくれたので良しとしよう。




****




「……で?」

二人が去った事を確認して凛が口を開いた。

「ランサー、あの子となんかあった?」
「ん?」
「しらばっくれないで。なんか隠してるでしょ?」

凛はランサーに詰め寄るが彼はなんのことやら、と。

「…ふうん。別に気にいいけど。なんで私のアーチャーと話があるのよ。アンタじゃなくて」

相変わらず知らん顔でランサーは肩を竦める。ただほんの、ほんの少しだけ心配そうな顔をした。


「……さぁな」


叶わない疑問
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