2月7日_衛宮邸


海南は布団にくるまっていた。


昨夜、あの後もランサーから離れずにひたすら腕にしがみつき顔を隠しながら衛宮邸まで戻った。そうして漸くランサーから離れ、真っ先に与えられていた自室へと走って去ったのだ。次の朝になっても海南は部屋にひきこもって、出てくる気配がない。

「嬢ちゃん」

襖の向こうから聞こえる声。

「何があったかはまだ訊かねえから、とりあえず飯でも食ったらどうだ?」

返事は無い。
ランサーは溜め息を一つ吐いて、部屋に入った。

「いつまでもウジウジしてらんねえだろ?また次があんだ」
「……ランサー」

背を向けたままに海南は声を発する。どことなく、沈んだ声。

「どうしよう」
「なにがだ」
「……どうしよう」

本当に困ったような声。海南は眉を寄せ、困った、と。
無論そんなことではランサーに伝わらない。海南の側に腰を降ろし、ランサーは頭を掻く。

「……なんかあんなら言ってみろ、きいてやるから」
「ううん、駄目なの」
「それじゃあ解決しねえだろ。つかお前隠し事多すぎ、そんなに俺が信用ならねえか?」
「…ううん、ちがう。ランサーは頼りにしてる。けど……」

こればっかりは、と。
彼女は唇を噛んだ。本当は言ってしまいたいのだ。言って、楽になりたい。そうしてランサーと話し合いことを上手く進めればいい。そんなこと、分かってる。

「……ごめんねランサー。いつか、いつか話したい」
「……まあ、飯食おうぜ。それから少し話そう」

うん、と海南は苦く笑って布団を片付け、着替え始めた。

「………」
「………」
「………」
「………なに?」

突き刺さるような視線に耐えきれず海南は声をかける。ランサーは溜め息を吐いた。

「男の前で服脱ぐか?普通」
「……ごめん、いや、うん。気にしない人なんだ」
「襲うぞ」
「だからごめん、って」

そこでランサーは気が付いた。

「そんなとこに令呪あったのか」

とんとん、と自らの心臓を指差して彼は言う。海南は指差された方を見て、目を見開いた。
そこには昨日まではなかった刺青が。それも、

「……三画に戻ってやがる」

完璧な三つ揃った形で。
ランサーはその手を伸ばして海南に触れた。

「……どうなってる?」
「っ、わかん、ない」
「……あとお前、他のサーヴァントに触れらたか?」
「…キャスター、だけ」

そうか、とランサーは言って海南の唇を塞いだ。

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