なんだ、どうしてこうなった。
原因である修道女(仮)は手を合わせ神に祈っていた。

「…あのですねー」

頭を掻いてどうしたもんか考える。くそう良い案が浮かばない。
あたしとバゼットはテーブルを挟んで向かい合っている。

「あたしはランサーを譲る気なんて毛ほどもありません、てか無理です」
「私には彼を召喚した責任があり、義務があります」
「気にしないで下さい。あたしはランサーのことが好きですから、手放しなくないだけですし」

キッパリと良い放つとバゼットはなんとも言えない顔をした。

「あたしはランサーと第五次聖杯戦争を共に生き抜きました。何回死にかけたかも分からないし、何回ランサーに助けられたのかも分からない。そりゃあ愛着も湧くってもんですよ」

ヤレヤレとあの青い槍兵を思いだしため息を吐く。手放したくないし、令呪を渡す気がないのも確かだ。しかしこう奴がモテてるみたいなシチュエーションはいけ好かんな。

さて、これ以上話すことはない。
あたしは令呪を渡さない。ランサーを渡さない、絶対何があっても。第一その時点でこの話しは終わっているのだ。


「私はっ、!」


バァンと机を叩き立ち上がるバゼット。
その表情はなんとも形容し難い。

「…………、わかりました。ただ、貴方が本当にサーヴァントのマスターであるのに相応しい者か、見定めさせていただきます」


「え、聖杯戦争もう終わったしあたし魔術回路とか持ってないからそういうのホントに無理」


そう言うとバゼットは目を見開きなんとも気の抜けた声を発した。





そうなのだ、あたしは魔術回路なんてものは持っていない。言ってしまえばただの魔力の塊だ。

……まあちょっとしたチート的能力は持ってますけどね。


時計に目をやり時刻を確認する。ふむ、4時30分。新都まで30分、良い時間かな。
その場を立ち上がり出掛ける用事を今作った。

「ランサー迎えに行ってくるわー。6時過ぎまでには帰ってくるね」
「お、おう」

適当に手を振り行ってきます、と居間にいる皆に言う。
さて、すれ違いにならなきゃ良いけど。



****



お目当ての喫茶店に着くといらっしゃいませ、という声と同時にウェイターさんと目が合ったので笑顔で会釈する。すると此方にやって来てあたしと同じく笑顔を浮かべた。

「ランサーならさっき上がりましたよ」
「あ、そうですか」
「呼んできますか?」

ちらりと周りを見渡すと今は暇そうなのでお願いします、と笑う。ウェイターさんは少々お待ちくださいと頭を下げ態とらしくあたしをお客様扱いした。



暫くしてウェイターさんと青髪がやって来た。此方に気付き手を振り早足でやって来る。

「わりぃな、待たせた」
「ホントにさ」

遅い、と腕を軽く叩く。それを華麗に無理してランサーはウェイターさんにお疲れさん、と声を掛けて店を出てった。

「それじゃあ頑張って下さい、笹木さん」
「はい。またのご来店御待ちしております」
「止めて下さいよ何もしてないのに…」
「あはは、そうですね。あ、そうだ。今度またバイト仲間で飲み会あるんで海南も行きましょうね」
「喜んで!」



…とまあランサーのバイト先の人と仲が良いのはあたしがよくランサーを迎えに行くから。そしてランサーが「バイト先の人と飲み会がある」と言い出したのを駄々っ子よろしく騒ぎ倒してあたしも混ぜてもらってからバイト先の人と打ち解けたのだ。お酒の力って凄いのね。てか現代に馴染みすぎだねうちのサーヴァント。

「おら海南早くしろー!小僧が飯作って待ってんぞ」
「あ、うん今行くー。あ、もしなんかあったらランサーに言っておいて下さい」
「はい、気を付けて帰って下さいね」

そう言って手を振ったウェイターさんに手を振り返して、ランサーの元へと向かった。
隣に並んで一緒に歩く。

「そういえばねーバゼットとカレンが一週間くらいうちに泊まるってー」

どうにもこう、気が緩むと喋り方もだらしなくなる。まあ気にしない。

「へえ。そりゃまた随分大変だな」
「だからあたし一回家出てくって言ったのに士郎ったら心配すんな!って怒ったんだよ。意味不明じゃない?」
「器用貧乏ってヤツじゃねえか?」
「いや微妙に違うと思う。でも士郎は器用貧乏だよね。アーチャー然り」

「……」


アーチャの名前を出すとあからさまに機嫌が悪くなるのがランサーだ。なにがそんなに嫌なのかあたしはさっぱりわかんないけどね。ただの皮肉屋さんじゃん、あの人。

「…お前って本当にお節介さん好きだな」
「応ともさ!クー兄貴!」
「俺かよ!」



下らない話しをしながら二人並んで、笑顔で帰って行った。

それが当たり前でした
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