「ねえクー」
「あん?」

ソファに正座をしているあほ娘はいつになく真剣な眼差しで拍子抜けした。ぎゅうと手のひらを握り締め太股に置いている。小さな手に爪が食い込んで白くなってるのが気になったが、今はそれどころではないらしい。

唇をぎゅと噛み、俯く。
何も発していないのに海南は耳を真っ赤にしていたので驚いた。なんだよ妊娠でもしたか。いや、あり得ねぇけど。

「…、……やっぱいい!」
「はあ?」

ソファから立ち上がり何処かに行こうとした海南の腕を掴んですぐにリターン。はい俺の胸にダイブ、おかえり。

「ンだよ、気になるだろうが。しゃんと言え」
「………」

今更隠すことなんざねえだろうが。何を照れてんだか。

「………き…」

小さく何かを呟くが聞こえる訳もなく。ああ?と聞き返せば開き直ったように叫んできやがった。


「あたしのこと好きですかって聞いてんだばかやろう!!!」


茫然。

海南は顔までも真っ赤な林檎のようにして俺を見上げる。なんだ襲って下さいってことか?欲求不満か。…最近抱いてなかったっけ?いや、二日前したばっかだった。

「……何を今更」
「うっさい禿げ!!死ね!」

ぎゃんぎゃんと俺の腕の中で暴れ回りながら足をじたばたと動かす。餓鬼か。しかし疲れたのか大人しくなったと思ったら今度は俺の胸に抱き着いてきた。やっぱし謎だ。あ、胸当たってる、揉みたい。


「……すき」
「おう」
「だいすき」


ぱたぱたと小さく足をばたつかせながら海南は俺の頬に頬を寄せてくる。あー、癒し。かわいい。

「クーは?」
「愛してる」

そう言って唇を重ねると海南は心底幸せそうに笑った。だから俺も笑う。

「しっかしまた、何で急に」
「……好きだから」

そう言って俺に抱き着いてくる。要するに、甘えたいらしい。お世辞でもコイツは甘え上手とは言い難い。引っ付いたりしてはくるがそれはあくまでも甘えるという訳ではなく、ただ存在を確認するだけの行為。だからこうやって甘えたいって言われると死ねる。

「んー、」
「ぎゅー」

腕の中に海南を閉じ込めて耳に唇を落とす。くすぐったそうに身をよじって耳元ですき、と言えばうん、とはにかみながら返してきた。

「明日仕事だっけ」
「あー、そうだわ」
「空いてる日買い物行こう」
「おう。あ、温泉行こうぜ温泉」
「あ!良いね!皆と行きたい!」


………………。


「クー?」


む、と唇を尖らせる。いや、この雰囲気でそれはないだろ。空気読めこの馬鹿女。すると何かを察したのか、にしし、と歯を見せて笑うのだ。

「皆と行って、クーと二人で行く」
「……は?」
「そしたらあたしは文句無しです」

そう言って笑いながら海南は俺の頬っぺたを突っついた。まあしゃあねえか、コイツ、そういう奴だし。ふにっと頬っぺたをつねると想像以上に柔らかかった。癖になりそうだ。しかし痛いのか、辞めて!と割と本気で腕を叩かれ頬を擦る。

「海南ちゃんかあわいいー」
「知ってますー」

きゃ、と決めポーズで可愛い子ぶる海南。素直に可愛かったので頭を撫でてやった。あ、照れた。

「クー、一緒にお風呂入ろう」
「おーっと、これは俺誘われてるな」
「えっちい事したら本気で怒るから」
「ちぇ」
「頭洗ってあげるから頭洗ってー、背中も」
「へいへい、わかりましたよ」

海南は俺の手を引きながら急かす。さて、据え膳とは言うが怒られたら堪んねえから出来るだけ我慢してやるか。けど反応するものは反応しちまうんで、それは流石の俺でもどうしようも無いからな。生理的なもんだ。





(結局上がってから美味しく頂きました)





やっぱり好きです
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