優しく下ろされた布団の上から逃げるように動こうとして、上から覆い被さった影に拘束されベッドに縫い付けられた。

「はぁっ、はぁ、は、ぁ」
「…ばかやろう」

それでも尚抵抗する海南にランサーは唇を落とす。何度も角度を変えて、舌を絡める。それだけで濃密な魔力が流れ出す。

「ん、はぁ…ン…!」

更に息を乱して涙を浮かべ、抵抗した。ほんの些細な、けれども精一杯の拒否。


二回目だ。


ランサーと海南が体を重ねるのは。ただあの時の海南に理性はなかったからか、その時の記憶は全くないらしい。翌日目を覚ました海南はそのことに対して何やら文句をぼやいていたような気がする。

まあとにかく、彼女からすれば初めての経験。

服の中に手をいれ、胸元まで捲り上げる。下着を無理矢理ずらし、柔らかいそれを掴んだ。


「…ぁゃ…だっ…!」


紡がれた言葉を消し去るように、ランサーはまた唇を重ねた。その唇からは卑猥な音だけが漏れる。ぼろぼろと虚ろな瞳から涙を溢す海南は、未だにランサーを拒んでいた。確かにその顔は欲に濡れているのに、ただひたすらに拒む。

「、海南…」
「ぅ、あ……ッ!」





どうしてこんなに悲しげなのか。





「海南、」
「や、だって…ッ…!良いから、ほうっておいてっ、!」

顔を手のひらで覆い、喘ぎながら嗚咽をもらす。膨張した魔力を多少吸いとられ僅かにも理性が戻ってきたのだろう。それでも、彼女は侵食されていく。

「いいんだっ、て、もう……!」

そう言って闇に体を委ねようと、それで構わないと。例え自分が死んでしまっても、それが、本来の姿なんだと。
彼女は涙を流す。


「お前が、」


顔を覆う手を、ランサーは自らの手で優しく退かした。色々な感情が混ざりあってぐちゃぐちゃな顔を、包みこむ。


「死ぬ時は」




「ランサーが勝手に死ぬなんて許さない。だからランサーが死ぬ時はあたしが死ぬ時だから」





もう一度、ランサーは唇を重ねた。拒むものは何もない。心臓辺りに浮き上がった赤い刺青が、ふたつを繋げた。


交わす想いは融ける
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