ハッピーライフでクーと不意に意識し合う二人
言葉を探した日
「お前らいつ結婚するの?」
ふと、何気無くセタ兄がそんなことを言い出した。わたしとクーがテレビを見ながら珍しく昼食を家でとってる時のことだった。
「「付き合ってすらいねえよ」」
あらま、声ぴったり。
セタ兄は「あーハイハイそうでしたね」と軽く流してから煙草を取りだし火を付ける。
「おいあっちで吸えよ兄貴。今飯食ってんだろ」
「細けえこたぁ気にすんな」
そう言いつつ立ち上がり換気扇を回す。で、と煙草の煙を吐きながらセタ兄はわたし達を見た。
「じゃあいつ籍入れんの?」
「じゃあじゃねえよじゃあじゃ、付き合ってないって言ってんだろ」
「はあ?まじで?じゃあ早く付き合って結婚しろよ。俺早くなまえとお前の子供みたい」
「セタ兄話ぶっ飛びすぎ」
けたけたと馬鹿にするようにセタ兄は笑いながら「早くしねえと案外近くの奴にとられるかもしんねえぞ」と冗談混じりに言いながら勝手にテレビのチャンネルを換えやがった。
*
例の如くゲームなう。今日は日曜だがわたし等はかなり珍しくバイトが無かった。ほんと何ヵ月ぶりだろう、って感じの日曜日だ。
「なまえクッション取って」
「ん」
青色の四角のクッションをクーに向かって投げ捨てる。それを片手で叩き落としてクーは頭の下に置いて寝転がった。きらり、と銀色のピアスがひかる。あたしはベッドに寄りかかりながらロード画面が切り替わる瞬間を待った。
「……ねー」
「んー」
「あたしとクー結婚したら、どんなんだろうね」
ただ今思っただけ、なんとなく口にしただけだった。なのになんだこの沈黙は。まるでわたしがこっ恥ずかしいことを言ったみたいではないか。
ぱちりと視線がかち合う。
数秒、数秒だけ。時が止まったように息が出来なくなった。ちょっとだけ早くなった心臓。そして、切り替わった画面に意識を戻す。
「……さァな」
ポツリとクーはそう呟いて、起き上がりわたしの横へと移動してきた。ああ、なんで顔赤いんだろう。ヘンなの。
そんな、安らかな休日。
まだ子供でいたいと願う臆病者の気持ち