夢見た乙女Ifの後日談で甘裏
愛され愛し
あの日から3日が経った。けれども何も変わらない、あたし達はあたし達のままであの世界は結局夢だったのだ。
だから。
「なにそんなに怒ってるのさ」
「お前があの槍兵とヤったから」
正直に言おう。あの時の感覚は今でも覚えているし、目を閉じなくともディルムッドのことはかなりリアルに覚えている。いやリアル過ぎるほどに、覚えてしまっていた。
「仕方ないじゃん…魔力暴走してたんだし…」
「それでも、すっげえムカつく」
「で」
「今からお前を抱く」
「嫌って言ったら?」
まさかそう切り返されるとは思っていなかったのか、ランサーは目をぱちくりとさせてからあからさまにへこんだ。うわ、なにこの可愛い男。
「……嫌か」
そう言ってあたしの体を引き寄せる。引き寄せて、抱き締めてきた。背中にそのがっちりした腕を回して、もう片腕はあたしの頭を抱えるように。
「なあなまえ」
「んー」
「好きだぜ」
「知ってる、誰よりも知ってる」
「けど足りねえんだ」
「…うん」
「抱きたい」
ああもう、狡い。
あたしは拒む理由が、ない。
案外細いランサーの腰に腕を回して強く抱き締め返した。手探りで髪の毛を留めている金属を探してそれを外す。ハラリと、彼の髪の毛がばらけた。
*
残念ながらあたしはランサーに優しさというやつを求めていた。だがそれはとんだお門違いだったというわけだ。
「はぁ、は…」
「もう息あがってんの?」
かぷりとランサーはあたしの首もとに噛みつく。そりゃもう、噛みつきすぎだろというほどに噛みついてくるのだ。お陰さまで噛み痕とかいてキスマークというやつがたえない、と思う。
とりあえずあたしだけが脱いでるのは不公平だと思った、のでランサーのアロハシャツのボタンを外してやる。すると逞しい胸板が現れるわけだ。
「なまえが脱がせてくれんだ」
つー、とでこぼこしている体を指先で撫でる。ランサーはくすぐったそうに口元を綻ばせた。それから、あたしの唇を塞ぐ。流れ落ちているランサーの髪が、素肌に触れてくすぐったかった。
「なあ」
漸く解放されて酸素を吸う。ランサーは耳元でワントーン低く、それでどことなく怒気を含んだ声で囁いた。
あたしの体のラインをその大きなかたい手のひらでなぞる。
「どうされた?」
「は、…?」
「だから、どこをどんな風にヤられた?」一瞬なにを言われているのかわからなかった。しかし、あの夜のことを、思い出して、
きゅう、と下半身が疼いた。
「…っ、…ない…」
ふい、と視線を逸らす。いやだって、言えるか普通。そんな性事情なんか。
「へえ。顔真っ赤だな」
「それは、ランサーが、」
「俺に言えないようなことされちまったんだ」
その赤い目が細まる。明らかに、怒っていた。なまえ、と耳元で囁かれて、
「俺以外お前を知ってる奴なんか居なくて良いのに」
「…っ…ランサー……」
「教えろなまえ。なにを、された」
両手はあたしの顔の横に。その顔は真剣そのもので、思わず息を呑んでその顔に見惚れた。
「――…っ、……め、…」
「ん」
「…な、め……た……、」
掠れる声でそう言ってから、自分の手のひらで顔を覆う。なんだこれ何プレイだちくしょう。
ランサーはよくできました、とあたしの手の甲に口付ける。そのまま、動いた。
「っ、ひぁ、…!」
「そんな声も聞かせたのかよ」
「…む…、っふ……!」
そりゃ覚悟はしていた。言ったら、するだろうなあ、って。
「つかお前濡れすぎ。ぐちゃぐちゃじゃねえか」
「…ん、ん………!」
はむ、とランサーは全体を食むかのように口を密着させあたしのソコを舐めあげた。ぞくりとした感覚に自然と腰が浮く。
「きた、な…は、あ、…!」
「汚くねえよ」
「う、くぁ……!」
何度も往復する舌に視界がボヤける。どうすれば良いのか、もう、
「…ぅ…あ…あああぁ…っ、!」
つぷりと、ランサーの舌が軽く挿し込まれてあたしは達した。駄目だ、これ、は。
「お前もしかして、これスキ?」
「はぁ、は、あ…!?」
「はっはぁん、覚えといてやる」
濡れた唇を舌で舐めて、ランサーは満足気に笑う。ああくそ、くそだ。ばかやろうちくしょう。
恥ずかしくてランサーの顔面を蹴ってやった。うおっ!とか聞こえたが知らん。無視だ無視。
もう一回蹴ってやろうと思って足をあげればそれを掴まれる。そのまま滑るように膝裏へと移動して、あたしの脹ら脛に唇を落として、舐めあげた。
「っ………!」
「なまえ」
「…う、…」
「俺もう限界なんだけど」
挿れていいか?と。彼はベルトに手をかけながら言った。そこはもうパンパンに膨れ上がっていて、
「…んなガン見すんなよ」
「……!」
恥ずかしそうに言ったランサーに漸く自然を逸らす。ああもうやだ、ばか。
ランサーの体が膝を割って入ってきて、手が腰辺りにつく。ぴったりと先端がくっついたらランサーがくすりと笑った。
「お前のすげえひくひくしてる」
「――…!」
「そんなに俺のほしかった?」
ちが、と言おうとしたが言葉にはならない。ぐんっと突かれる感覚に頭が一気に真っ白になった。
「う、ぁあっ…んん……、あ、あんっんぁ!」
「…っ、なまえ、」
「あ、あっあっ、らん、あっあ、!」
必死に背中にしがみつくとランサーは笑った気がした。だがそれどころではない。波打つ快楽に溺れぬよう必死に意識を止める。爪を立ててしまったが、仕方がない。
「ゃ、やっ、やだっ、んぁ、あ!」
「はぁ、何がっ、やなんだよっ!」
まるで盛った犬のように腰を振りながら、ランサーはあたしの唇を塞ぐ。舌を差し出せば絡めとられて唾液が垂れる。
「ふぁ…ぁ、っあ、らん、さぁ!」
「チッ……あー、くっそ、たっまんねぇなぁオイッ」
あたしをベッドに押し付け膝裏を持ち、更にこちらに体重をかけてきた。もちろん、更に奥へと突き立てられる熱いソレに意識が浮遊する。
「ぅあ、!らんさあ、ん、ぁあっあ!」
「そうやって、っ、喘いでたのかよっ!」
「っふ、あ……らんさ、らんさ、あっす、き、すき、!」
がつん、と硬いのがお腹の奥を突く。軽い痙攣を起こした指先と、ランサーのが奥に吐き出された感覚を感じながら瞼をとじた。こぽりと少し寂しくなったナカを感じつつ目の前にある肌色に擦りよった。
「…はぁ、…はあ…なまえ、」
息を切らしているのなんて珍しい。なあに、と答えると彼はあたしを強く抱き締めてきた。
「……離したくねえ」
「はなさ、ないで」
「…誰にも触らせたくねえ」
「それは駄目」
「あ゛ー、もうお前が愛しすぎて気が狂っちまいそうだ…」
「あたしなんかもう、とっくの昔から狂ってる、よ」
「……は、はは…最高」
足を絡ませるとにちゃりと卑猥な音が聞こえた。けれども気にせず、今はただ、この幸せを。これからも続きますようにと強く願った。
口に出してしまった感情を愛して止まない