何かがぶつかりながら落下する音が教会に響き渡った。
何事かと思い綺礼は席を立ち、音のした方へと向かう。そこには、抱き合っている男女が床に転がっていた。

「〜〜っ、」
「!無事かユリアナ!」
「っ、余は平気だ…ギルガメッシュ、お前は、」
「此れしきなんて事はない」

「…何があった」

声をかけ漸く綺礼の存在に気付いたのか、二人は上を見上げる。

「っ、気にするな綺礼。少し躓いただけだ」

そうは言っても先程の物音からするに躓いた、などでは済まされない。綺礼は二人の奥を見て、状況を理解した。

「階段から落ちたのか」
「ああ……階段であったか…床が抜けたかと思うたわ」

忌々しそうに先程自分が転がり落ちた階段を睨みつける。無論、意味などないのだが。
要するに足場が急に無くなりそのまま転げ落ちそうになったところをギルガメッシュが抱き止めたが足場が悪い階段では上手くバランスを取れず二人で転がり落ちた、というところだろう。
ギルガメッシュはユリアナの手を取り立たせる。

「全く、肝が冷えた」
「…むう、済まぬ」
「しかしお前が傷物にならんで安心したわ」

今のユリアナは人間と同じなのである。特別な力があるわけでも驚異的な再生能力があるわけでもない、ただの人間。ギルガメッシュとて受肉をしたが魔力供給がなければ生きていけない。けれども彼女は魔力供給などなくとも現世に身を置いていられるのだ。

多大な犠牲と引き換えに手に入れた肉体。

「しかし、足元が分からぬのが難点だ」
「…そうだな」

その会話を聴いてふと、綺礼は思い出したようにどこかへ行き、一本の棒を持ってきた。それをユリアナに持たせる。

「…なんだこの棒は」
「いや、盲目の人間はそれを使い目前にあるものを確認するという」

彼女は見えぬ目をぱちくりとさせ、成程と頷いた。頷いて、その棒で床を突く。かつん、とそれは綺礼の靴に当たった。

「ここに綺礼がおる訳だ」
「ああ、それを使えば段差も分かるだろう」
「うむ…褒めてつかわすぞ綺礼!中々の名案だ!」

別に自分が考えた訳ではないのだが、と心に思ったことを口にはせずに多少上機嫌になったユリアナと未だ片手を取っているギルガメッシュを見た。


(数日後「飽きた」と言ってその棒が使用されることはなくなったが)
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