「………ユリアナ、」
「入るなッ!!放っておけ!!」

教会の一室、闇に包まれ金色の糸が靡いている。白いベットには無数のシミが。

「何故!!こんなことになるのならば死んだ方がまともだ!」

力を失った自分は要らないと彼女は言う。自らの目が見えないのならば消えた方が良いと彼女は叫ぶ。力の無い権力者など無能だと。弱者と同等、若しくはそれ以下であるという事実が彼女のプライドをズタズタに引き裂いていた。


「要らぬ!!こんな余は要らん!殺せギルガメッシュ!!この世に受肉したとして力も無く光すら見えずに何が出来る!雑種共に嘲られるのならば死んだ方が良い!ころ、」


殺せ、と言おうとして頬に痛みが走った。何が起きたのか理解出来ずに自らの頬に手を添える。そこは確かに熱を持っていて、恐らくは赤くなっているのだろう。
何かが己の体を包む。ふわりと香る匂いで、誰に抱きしめられているのかを理解したと同時に自分が叩かれたという事実を理解した。

「戯れ言を並べるのもいい加減にせぬか――!貴様はこの我の妹であるのだぞ!死にたいなどと嘘でも申すな…!」

僅かに震えている体は怒りによってか、哀しみによってか。暗闇にいる彼女に知る術などはない。

「居ない方が良い…!ギルガメッシュとて此の様な出来損ないと血が通ってると知れば良い笑い者だ…!」
「黙れ!その様な輩肉片も残さずに消し去ってくれる!」

骨が軋む程に強く抱きしめられ、彼女は唇を噛む。

「瞳が見えぬのならば我がお前の瞳となろう。力が無いのならば我がお前の力となろう」
「……」
「だから我と生きよ。瞳も力も、我が元にように戻してみせる」

彼女は嗚咽を漏らしながら自らの兄に縋った。そんな妹をギルガメッシュは強く離さぬように抱き締めながら無力だと己を呪い、聖杯を呪った。あんなものだったのなら破壊してやれば良かったと。

必ず元に戻してやると、心に誓い己の半身に唇を落とした。
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