此の城壁に囲まれた街。壁の外からでも分かる城。其処がギルガメッシュとユリアナ達が住まう場所でもある。ユリアナは街を抜け、平伏す門番を前を通り街の外へと出た。暫く歩けば森へと着く、其処を唯ひたすらに歩いていた。宛てがない訳ではなく、唯ひたすらに目的の場所へと。

そうして着いた場所は見晴らしの良い草原だった。とても広く、黄色い花達が風に揺れて靡く。その真ん中に彼女は腰を下ろした。

「御前等は良いな。無駄口も叩かずにただ美しい。香りも良い」

彼女は一人呟く。そう、一人。その視界には群れを成して咲く花が存在してるいるだけ。邪魔者は居ない、何か口を開くものも、この世界にたった一人だけのような気さえ出来る。此処は、お気に入りの場所だった。それでも一人で来たのは初めてだったかも知れないしそうじゃ無いかも知れない。記憶に在るのは、何時も隣に居るのは、自分の片割れであったから。
なのに何故、あの様な泥人形等に心動かされているのか。此の余の存在よりもアレは大切だとでもいうのか、そんな沸々とした怒りに似た感情が胸の内を覆って仕方がないと悶々とする。こんな感情は要らない、必要ない。そうは思っていても、この内にある感情は自分でどうにか出来るものではなかった。

「嫌いだ」

自分自身を抱き締めて呟く。あの泥人形も、自分のことを見ない片割れも。こんな世界も。こんな世界を創り上げた神々も。


「誰のことを言っておる」


聴き慣れた声に顔を上げて、其方を向けば逆立てた黄金の髪に白い服を身に纏う姿。

「全てが」
「可愛い我が片割れよ」
「煩い」
「ユリアナよ」

自棄に上機嫌なギルガメッシュに腹が立つ。何故そうも機嫌が良いのか。余は機嫌が悪いというのに、違う感情を抱くギルガメッシュにも腹が立った。眉間に皺を寄せていれば伸びてくる腕、躱す理由などなく、容易く捕まり抱き上げられる。

「嗚呼、我の愛おしい妹」
「…」
「御前は嫉妬していたのか、エルキドゥに」

可愛い奴め、とギルガメッシュは彼女を抱き締めだらしがない笑みを浮かべ頬擦りをした。ユリアナは唯されるが儘に。

「…余を見ない貴様等嫌いだ」
「何時でも見ているであろう」
「嘘を吐け。嘘吐きも嫌いだ」

すり、と胸板に額を擦り付ける。何時もの匂い。安心する匂い。彼女は目を細める。

「…済まなかった、そうだな。少しばかり御前を放置しすぎたやも知れん」
「…赦さぬ」
「問題無い、此れからは三人で出掛ける事にしよう」
「泥人形と仲良く等したくも無いわ」

頬を膨らませ、眉を寄せ。不貞腐れた子供のようにギルガメッシュに擦り寄る。そんな妹にギルガメシュは溜息交じりの苦笑いをしつつ、長い髪の毛を優しく鋤いた。


「エルキドゥは我が認めた男。ならば、御前も認める事になろう。面白い奴だ――…一度話をしてみよ。良いな?」
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