「これはなんだ」
「ほうれん草と人参の野菜炒めです」
これは、と言ってカツンと箸の先が茶碗に触れる。それをセイバーが何を入っているかを言って、と繰り返し全てを確認し終え漸く、口に運んだ。右手には箸左手には白飯というスタイルで。
もぐもぐと一人で食事をしていると鳴るインターホン。士郎はセイバーにユリアナを任せ、玄関に向かった。
「セイバーよ」
「……何ですか、アーチャー」
決して敵意は殺さずにユリアナを見据えるセイバー。ふふん、と彼女は鼻を鳴らす。
「貴様まだあの馬鹿げた願いを聖杯に祈るのか?」
「――!」
「ならば先に忠告しておこう。止めておけ、”アレ”はそういうものではない」
「貴女の言い分はきかない。それは前回学んだことです」
そうか、とさして気にするでなく彼女はまた食事を再開した。
「と、遠坂…!」
「なによ。怪しいのよね、衛宮君。わざわざ追い返す必要もな、……あら?」
「むぐ……、もぐ、むぐく…?」
「………彼女は?」
「ええっと…」
「前回の聖杯戦争の、アーチャーです」
きっぱりとそう答えたセイバーに場が硬直する。しかしユリアナは一人食事を続けた。ふわりという感覚に彼女は箸を止めて、後ろを向いた。
「……髪の毛が……」
「む。アーチャーか」
「………飯に、だな………」
なんとも歯切れの悪い。しかし、彼とて本当は実体化するつもりはなかった。なかったのだが、どうしても食事につきそうなその長い髪を放置しておくことが彼には出来なかったのだ。
「ちょ、セイバー!彼女がアーチャーって…!」
そうして漸く凛が口を開く。
「煩いぞ小娘。余は食事中だ、質問なら受け付けてやるから黙っておれ」
「な…っ!」
「オイ小僧、髪止めはないのか」
「え、あー…、あったような…ちょっと待ってろ」
なんというか、遠坂凛は何も言えなかった。