とたとたと小さな子供の足音。
きゃっきゃっと戯れるような少年と少女の声。はて、と綺礼は首を傾げる。この教会に子供など、地下以外には。

その二人は中庭で遊んでいるらしく、がさがさと葉を弄る音が聞こえた。


「綺麗じゃないですねー、荒れてますし。こんなに広いんですから庭師でも雇えばすっごい美しい庭になると思うんですけど、」
「ねーねー見て見てー!」
「はい?って、わっ!」
「プレゼント!」
「すっ、すごい…」
「何かわかんないけどね!」


この教会には到底似合わない愉しげな声。錆びつき枯れた庭にふわりと、金色が舞った。

「えへへ!」
「あんまり走り回ると転んじゃいますよ」
「へーきへーきっ」

くるくるとそれは庭に舞う。枯れた庭に、唯一の色をもって。

ぴたりと足を止めて、それはこちらを見た。大きなルビー色の瞳とかち合う。

「――…、」
「…?誰かいる?」
「え?あ、言峰じゃないですか」

ひょっこりと、もう一人金色の少年が顔を出す。こんにちわ、と愛想良く笑いながら。

「君たちは…」
「…もしかしてあの人言ってなかったんですか?」
「あの人?」
「あっちゃー…。なんで説明しないかなあ…」

やれやれと肩を竦める少年の手を少女が取った。

「ギル、ユリアナおなかすいた」
「ああ、もうそんな時間か」
「ギル?ユリアナ?」

聞いた事がある名前。しかし、あの二人はこんな小さな子でもなく、こんなにもまともな性格をしていない。未だ混乱している綺礼に金髪の少年はにこりと笑った。

「若返りの薬って、ご存知ですか?」
「若返りの?………ああ、」

そういうことか、と疑問は晴らされた。確かにギルガメッシュの宝庫ならばそのような薬はあるだろう。彼は昔、それを手にしていたのだから。

「ねーねーギルってば」
「はいはい、お昼ごはんですよね」
「うん!コトミネも一緒に食べる!」
「ていうか、言峰が用意しなくちゃいけないんですが…」
「コトミネー!」

きゃいきゃいと、自らをユリアナと称す少女は綺礼の足元をくるくると回る。何もかもが、愉しいというように。だから綺礼は不思議に思った。これは確か、光が見えない筈なのではと。

「見えないよっ」
「…!」
「なぁんにも見えない!けど良いの!わかるから!」

そう言って先に中へと駆け足で戻る少女。そのあとを少年が駆け足で追う。ぽつりと中庭に残された綺礼は庭を見て綺麗に編み込まれた花輪を見た。
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