わたしは兄が好きだ。
いきなりなんだよとか言われるかもだけど、とにかく好きだ。
わたしは弟が好きだ。
つうか可愛い。死ぬほど可愛い。“お姉さん”でも“お姉ちゃん”でも良いから呼ばれたい。いや言ったら照れつつ言ってくれるんだけどさ。
まあ、この話には矛盾が生じている。
…わたしに兄弟は居ません。
そんな訳で起床。
充電している携帯で時刻を確認して隣でわたしと同じように寝てた奴を蹴飛ばす。
「………」
「………、」
会話、無し。
理由、眠い。
あと頭と体痛い。理由は言わずもがなこの目の前に置かれている2つのコントローラーと床で雑魚寝したせいである。ベッドは二時間前同様綺麗なままだ。
それでも起きねばならない。この時点で7時30分。学校は8時30分から。歩いて20分。わたし達はまだ制服に着替えてすらいない。
また寝だした馬鹿野郎を放っておいて昨日のうちに持ってきた制服を着用してしまう。髪の毛?知らねえよ時間勿体ない。Yシャツとスカートを着て、ふんずけた。
「……なんじ」
「45分」
チッ、と舌打ちをして彼は気だるげに立ち上がり、服を脱ぎだす。クローゼットに入っている制服を無言で手渡すと「髪」とだけ言われた。「しね」と答えて机を漁り櫛と髪止めを取り出す。着替えてるのをお構い無しに少ないが長い後ろ髪を纏めてやった。上着は既に着用済みだからちょっと動くのがイライラするだけで問題ない。
時刻は55分を過ぎている。
下に降りるとフライパンを持った“兄”にでくわした。
「なんだ、起きたのか。今から起こしに行くとこだったのに」
そのフライパンでか。お玉なしのフライパンオンリーか。頭にたんこぶができそうですね。
「セタ兄、ディルちゃんは」
「オメェらよか30分早く起きてるよ」
「ちっ…」
起こしに行きたかった。あの美貌を拝んで1日を始めたかったのに…!
「良いから朝飯食え馬鹿共。遅刻しても俺は送ってやんねえぞ」
「うえ、ケチ!」
「叫ぶなあったま痛ぇ…」
「夜遅くまでゲームしてっからだ、あほ」