成績不振者
「海南、クー」
「「?」」
「お前らちょっと座れ」

セタ兄がいつも通り煙草をくわえながら机を叩く。あたしら二人は顔を見合せ、椅子に座った。するとセタ兄は煙草を灰皿に押し付け火を消す。
そして、二枚の紙を机の上に置いた。


「「………」」


瞬間的にあたしとクーは視線を逸らす。セタ兄は溜め息をひとつ吐いた。

「……ウチはよぉ、別にどんなにバイトしようが遊ぼうが何しようが口は出さねえ主義だからなんにも言わなかったけどな」
「「……」」
「流石にこれは酷いんじゃねえの?」

俗に言う、それは成績表というやつでして。わたしとクーは、まあ、うん。何も言わないでほしい。

「クー、お前今バイト何個掛け持ちしてやがる」
「みっつ」
「海南」
「…みっつ」
「てめえ等通帳持ってこい」

こうなっては言うことを聞くしかあるまい。二人で鞄の中から財布を取りだし、通帳を机の上に置いた。セタ兄はまずクーの通帳を見る。眉を顰める。わたしの通帳を見る。……顔を顰めた。

「――…おめえ等馬鹿だ馬鹿だとは思ってたが、本当に馬鹿だな。高校生の貯金が70万ちょいあるなんて聞いたことねえぞ」
「いやあ月9、10万くらい稼いでるし…」
「大学行く資金だよ」
「大学に行きてえならまず勉強しやがれ!進級すら危うくて大学なんざ行ける訳ないだろ!」

バァン!と机を叩く。いや、はい。……仰る通りで。

「ディルの見てみろ。コイツ成績優秀者だぞ」

と、ディルちゃんの成績表を見ると5段階評価の5ばっかりで、たまに4とかいう恐ろしい評価だった。まあ、頭良いしあの子……。

「…で、兄貴は何を言いたいんだよ」
「要するに勉強しろクソ共という事だ。補習サボんなよ。留年なんざすんなら学校辞めやがれ」
「「……はぁい」」



だがバイト辞めろとは言わないのがプロト兄の良いところである。



「……俺もバイトしようかな…」
「「駄目(だ)っ!!」」
「!?」
「ディルがバイトしたら仕事だとかを口実に女共から言い寄られるだけだろ!」
「そーだセタ兄のいう通り!ディルちゃんの分もわたしが働くからっ!」

「……お前等……将来的にはディルも働かなきゃならねぇんだぞ…」


prev next

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -