Jimpei Matsuda



*直接的な表現はないR15程度




「じんぺーくんただいまー。」


妙に間延びした声で彼女が帰宅を告げた。今日は飲み会だと言っていたか。あまり飲むなと言ったのに、その声からは、かなりひどく酔っているように感じられる。大方、上司に飲まされたのだろう。この様子ではリビングにいる俺のところに来る前に、どこかにぶつけてけがをしそうだ。重い腰を上げて、玄関まで迎えに行った。


「おう、おかえり。随分と飲んでるみたいだな。」
「えへへー、5杯だよ!すごいでしょ。」


大層ご機嫌な彼女は、両手を広げて赤い顔をしながら笑う。それじゃ10だろ。よしよし偉いななんて言って持っていた鞄を取り上げると、腰に腕を回してリビングまで誘導した。その間も何を飲んだとか楽しそうに言っているが、酔っ払いの戯言だと思い相槌を適当にうっておく。ソファに七海を座らせると、ジャケットを脱がせた。


「じんぺーくんに介護される…。」
「手のかかる彼女なこった。」
「やさしいもんね、ありがとありがと。」


頭を撫でているつもりなのだろう、彼女の腕は届かず、奇しくも俺の肩を撫でるだけだ。そんな彼女が愛おしくてついつい見つめてしまう。そのうち、視線は顔から首へとどんどん下がっていった。胸元へと目を落とせば、あらわに開いたシャツから鎖骨が艶やかに誘っている。それにしても、シャツのボタンを開けすぎじゃないか。恋人贔屓をなしにしても彼女は魅力的な美人だ。そんな彼女に少なからず好意を寄せる男はいるだろう。…自分以外の男に見られていたとしたら。彼女の無防備さに腹が立つ。


「それ、開けすぎだろ。」
「あー、ボタン?飲んでたら暑くなったから外しちゃった。」


あっけらかんと言う彼女に、俺の沸点は簡単に越えてしまった。肩を押して体を倒すと覆いかぶさって、ソファの上に組み敷く。状況がわかっていないのか、彼女は笑顔を崩さない。その笑顔にさえ今日は苛立ちを覚え、首にかみついてやると、甘い声を上げて初めて抵抗の色を示した。


「…じんぺーくん、なにを…。」
「うるせぇ、もうおまえ一生飲みに行くな。」
「それは無…理っ…。」
「じゃあ飲みに行っても酒は飲むな。」


噛みつくようにキスをして、拒否の言葉が出ないように舌を絡める。仕事上の飲み会だ、断れるはずもないことは重々承知である。それでもこんな風に無防備な彼女の酔った姿を、ほかの誰にも見せたくはないのだ。時々吐息を漏らしながら目を閉じる彼女は妖艶で、自分にしか見せない姿だと思うと背徳感が襲う。次第にキスだけでは物足りなくなって片手でシャツのボタンをはずしていくと、白い肌が露になる。長いキスを終えて口を離すと糸が繋がった。


「こんなところで、ねぇ、…ちょっ…と…ん。」


拒否なんて煽る材料にしかならないというのに。眉を寄せながら懇願する彼女の口から垂れた涎がまた情欲を駆り立てる。涎を舐めとってから、鎖骨に舌を這わすとまた甘い声が上がる。噛むように刺激をして、胸元にも降りていく。七海は俺の頭を両手で挟んでどけようと力を込めてくるが、全然力など入っていない。


「酔い、醒めたか。」
「…ばか、醒めるに決まってるでしょ…。」


顔を赤らめて睨む彼女にキスを落とす。


「…飲みに行くなってのは言い過ぎた。でも節度は護れよ。」
「ん…。」


素直に頷く七海に満足した俺は彼女の上から退き、体を起こさせる。頭は回っていても、体にはまだ酒が残っていて怠いのか、俺の胸にもたれかかってきた。見下ろせば、はだけた胸の谷間が露になったままで、唾をのむ。彼女の体を労わって、やめようと思った行為も、欲には敵いそうもない。下半身、もとい太ももに手を這わして撫でるように上へと滑らせる。


「…だから、場所かえよ。」
「そうだな。ベッド行くか。」


これからする行為自体に拒否しない七海の案に賛同し、彼女の膝裏に腕を回すと持ち上げて運ぶ。やさしくベッドに体を沈ませると、再び覆いかぶさった。


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