冬が死んだ日(あおた)

昔からよく言われていた。
「重いわ」
「いや、ねーから」
「1週間も待ったの?わ、すげーな」
最後には罵詈雑言を投げていく人達。男でも女でも、あおたの愛情を受け入れるものはいなかった。最初は容姿がいい、優しいと取り入ってきても、最後にはそんな言葉を残していく人達。膝を抱えて、雪の降る日は玄関で凍えた、夏の暑い日は朦朧としながらも膝を抱えた、雷が鳴っていても、風が吹いていても、雹や霰が降っていても。
「まだかなあ」
ずっとずっと、何日でも何週間でも待ち続けた。
「何が悪かったのかなあ」
白い扉の前で立ち尽くす。扉は凍り付いて、こちらから開けることは叶わない。空は灰色の雲が覆い、一面には雪が降り注ぐ。周囲にはまるで過去の墓標であるかのように十字架が立ちすさんでいた。
「なにを待ってるんだっけ…」
今日は誰を待ってるのか、そんな大事なことですらも忘れ去りながら、掌にハー、と息を吐く。願わくば今待っている人は笑顔が眩しくて、あおたの愛を受け入れてくれる人であれ、と願いながら。膝を抱えて、あおたの上に降る雪が重くなっていくのを感じながら。目をこすって、息を吐いて。
「誰も来ないのかな」
そんなことを呟いて数分。
“ピシ…”
音が響く、それはまるで氷が割れるような。幻聴かな、寒いし、よくあることだよね、そう流そうとした。
「---ちゃん…」
心のどこかで叫ぶ、その声を知っている、と。その声に突き動かされるように顔を上げて、ぼんやりと扉を見つめれば氷がはらはらと落ちて。
「あおちゃん!」
光の奔流、それは奇跡であろうか。その人の姿は見えないけれど、重ねた時間が体に染み渡って。
「っーーーー!」

「っ?!」
顔を思い切りバッと上げる。
「…?…??」
きょろきょろと周りを見渡せば、此処は大学で。十字架も雪も凍った扉もなくて。あれ?なんて首を傾げる。だけど、1秒1分と立つたびに記憶から夢が抜け落ちていく。その代わりに沸き上がる思い。
「ヤマトくんに会いたいな」
今日はバイトのない日なのだから、きっとリツくんのカフェに行けば会えるだろう。足が、鼓動が、まるで今まで過ごしてきた時間を洗い流すように身震いさせて、走り出させる。ヤマトくんと重ねた時間があおたの心を照らし出す。きらきらきらきら、と。それを表すのならきっとそれは雪が太陽に溶けた後の野原のような。暖かく、輝いて眩くて。
(大事な、気持ち…)
とくんとくんと高鳴る胸を押さえて、あおたはカフェについたら何を伝えようかと夢想する。







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