倒 錯わぁる ど

・微睡みに流されるA
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その後やまとくんは何度か僕の携帯に電話をかけてきては僕とお話をして帰って行った。そのたびに
「朱織ちゃんは周りにちゃんと大切にされていることを理解しなきゃいけないよ」
なんて説教される。やまとくんにそれを言われたところで僕はこんな割のいい仕事をやめることはなかったけれど。今日も今日とてお仕事は数件入っている。
1日で10枚稼げそうでうきうきしてしまう。

何食べよう。りっくんのところで美味しいもの作ってもらおうかなぁ。
待ち合わせ場所であるホテルに向かう途中、ちゃんとばれない裏道を使う。警察対策はばっちり。スキップしたくなる気持ちでラブホテルの前にいる男に声をかけようとしたところだった。男は次の瞬間には吹っ飛んでいたのだ。

「…え?」
「うちの知り合いとラブホテル前で待ち合わせってどういうことだ!」
「……えええ…」

黒髪がなびいている。とび膝蹴りをあてちゃうなんてさっすが…
とか感心している場合じゃあなかった。僕はその人物に対して急いで声をかける。

「りっくん!!!」
「お前またかよ!何してんだ!」
「もーなんでもいいからぁ!とにかくりっくんこっちきて!!」

あんまりうるさくされては警察にマークされてしまう。
未成年の僕からしてみればそれが一番恐れていることだ。りっくんととにかくその場を離れることを最優先。あーあ、今日の10万円が…なんておもう余裕はその時の僕にはなかった。りっくんのお店まで戻ってくればやまとくんが驚いた顔をしている。

「あれ、朱織ちゃん、今日一日仕事だって…あ、先輩。」
「やまと…お前知ってたのか」
「やまとくんはお得意さんだもん…」
「ちょっと朱織ちゃん!?誤解を招くようなこと言わないの!
あとまじで先輩違うからよく研いだ包丁をこっちに向けないで!」

今日の最後の仕事はやまとくんと会うことだったのだがそれもぱあになってしまったようだ。僕はりっくんから大好きなミルクティーを出されて頬を膨らませながら文句をいう。

「もー僕の10万円どうしてくれるのさぁ…」
「お前そんなに稼いでどうするんだ」
「最近のチェーエンソ―ってすごいんだよ、すぱって切れるの。しかも充電式。
コードないの。すごくない?僕あれで人のこと切りたくて。
きっと切れ味いいし切断面綺麗だと思うんだぁ!」
「ちょっと保護者呼んでくる」
「にぃちゃんなら今日ルンバとデートだから呼んでも来ないし来ても眼光で人ひとり殺せるくらい機嫌悪いだろうからやめいたほうがりっくんのためだって忠告しとくね。」
「先輩、それはやばい。
先輩も怖いけどルンバとのデートを邪魔した時の絆創膏くんは久々の休みに心優ちゃんと遊びに行く予定を潰されたときの先輩と同じくらい機嫌悪いから。」

りっくんは心優という名前がでてきたことで表情に柔らかさが戻った。
が、僕に対するお説教は終わってないらしい。まだ不機嫌オーラはきえていなかった。

「で、いつになったらああいうことやめるんだ」
「そうだなぁ、僕が好きな人でもできたらやめるかも。
りっくん僕の彼氏になってくれる?」
「未成年に手出せるか」
「そんなの建前で本当は心優ちゃん本命なくせにぃ…あっごめんねりっくん調子に乗った僕が悪かったからフライパンを構えないで!」

本気でりっくんに彼氏になってほしいとは思わなかったけれど、りっくんややまとくんに想われる心優ちゃんやあおちゃんはきっと幸せなんだろうとそれだけはわかる。それでも僕は好きな人を不完全なままで愛することはできないだろう。もう少し違うベクトルで愛を示せればよかったのだけれども生まれつきだからしょうがないか。

「朱織くん、いい子なんだから大丈夫だよ」
「もーやまとくんまた僕の頭撫でる!浮気だ浮気!」
「朱織ちゃんの髪くるくるしててついいじりたくなるんだよー」
「僕天パコンプレックスなんだけどー!?」

どんなにお説教が長くても僕の仕事を邪魔してきても、それでもいい人だから嫌いにはなれそうにないや。僕は二人と別れてから明日の仕事のキャンセルの電話を入れた。


ほのぼのな感じで。やまとくんとりっくんは朱織くんの保護者がわりに世話焼いててくれるとかわいいし多分朱織くんも偽りない善意には弱いと思う。簡単にほだされそう。でもきっと恋愛感情ではない。

     

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