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ばれんたいん。そういうイベントがあるらしい。そんなことはどうでもいいのだけれどばれんたいんの主役はマルが大好きなちょこれいとらしい。ちょこれいと。とっても甘くておいしい!マルはちょこれいとが大好きだったからオミちゃんにもあげたい。でもマル、なにか買いに行くの苦手だから自分で作ってみようって思った。でもリツに全部教えてもらったらマルからのちょこれいとじゃなくなっちゃう。ばれんたいんって「好きな人に好きって伝える日」らしい。だからリツの「すき」が入ったらマルの「すき」に混ざっちゃう。だからマル、リツにやり方だけ教えてもらって最後は自分で作るって言った。ちょっと不安だったけどマル、オミちゃんのことになら誰にだって負けないしあんなに頑張ったんだから大丈夫。マルはできる子だってオミちゃんも言ってくれてたもん。

「でき、た」

どうにか形にはなったと思う。ちょっと焦げちゃったけど、まぁ、そんなに目立ってない…と思うけど。どうしよう。オミちゃんに要らないって言われたらどうしよう。多分オミちゃんもちょこれいとつくってるのかなぁ。マルはこっそりとオミちゃんにだめだよ、って言われてたのに、こっそりならいいかな、なんてオミちゃんのところにばれないようにゆっくり近づいていく。まぁるいちょこれいと。つやつやできれいなちょこれいと。マルのとは大違い。まるでおみせの売り物みたい。マルはどうしていいのかわからない。ぐるぐるする。マルにはできなかった?これじゃオミちゃん、喜んでくれない。どうしたらいいのかわからない。どうしよ、どうしよう。マルは逃げ出すことしかできない。とぼとぼとマルは自分のそれをちらりと見る。不恰好で、かっこわるくて、オミちゃんに渡せない。こんなの。捨てちゃえばいいんだ。元々不恰好だったラッピングはマルの涙でよりぼろぼろになった。

「マル!」
「おみ、ちゃ、」
「なに、捨てようとしてるの?」

オミちゃんはマルの手を掴んだ。やろうと思えば振りほどけるけれど、マルにはできない。オミちゃんはマルの手からそれをぱっと奪い取る。マルが止めようとした時はもう遅くてオミちゃんはするするとラッピングをひも解いてもぐもぐとそれを食べ始めた。オミちゃんの作ったものと、ちがうのに。美味しくなんてないはずなのに。オミちゃん、それなのに、笑顔でぱくぱく食べていく。

「マル、」
「は、はぃ!」
「おいしいよ。」

オミちゃんも泣いていた。マルもないた。おいしくないのにどうしておいしいって言うんだろう。わからないよ、オミちゃん。

「マルのすき、よくわかるから」
「すき・・・?」
「バレンタインは、好きな人に好きって言う日、でしょ」

だからね、おいしいの。オミちゃんはそうやってわらう。マルはちょこれいとすきだから、にがいのきらいだから、すきってそんな甘いのかな。オミちゃんはゆるりと笑ってじゃあリツにちょこれいと作ってもらおう、って言ってくれた。あまい、おいしいちょこれいと。にがい、すきのつまったちょこれいと。マルはよくわからないけど、オミちゃんが笑ってくれたからそれでいっかぁ。指をぺろりとなめるとほんのりと苦みがひろがった。

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