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人間にはばれんたいんという風習があるらしい!
大好きって気持ちをチョコレートに込めて好きな人に送るだなんて人間も偶には粋な事をするじゃないか。マルの大好きはいつだってオミちゃんのものだけどそれを形にできたらこの気持ちはもっと伝わるかなあ?伝えたいなあ。
決めた!マルはオミちゃんの為にチョコレート作る!料理なんてした事ないけど!

「マルがオミちゃんの為にできないことなんてない!」

オミちゃんが好き。オミちゃんを喜ばせたい。オミちゃんの笑った顔が見たい。オミちゃんだらけの頭の中でリツにマルにも読める様に書いて貰ったれしぴと睨めっこしながらたくさん時間をかけてチョコレートを作った。失敗もいっぱいしたけど諦めようだなんて気には一度もならなかった。

「できた!」

よし。焦げてない、毛が混じってない、割れてない。マルのオミちゃんへの気持ちがやっと完成した!早く渡したいなあ。なんだか体がうずうずする!
袋に入れて赤いリボンで結んで。あれ?蝶々結びのやり方もちゃんと習ったのに何度やっても蝶々が縦になってしまう。変だなあ?こんなんじゃオミちゃんに渡せない。もう一度リツに聞きに行こう。
きっとまだ屋敷のどこかに居るはずだ。フンフン鼻を鳴らして探しているとふわっと甘い匂いが漂ってきた。

(チョコレートの匂い!)

誰かチョコレートを食べてるのか?マルも食べたい!匂いの元をたどるとそこには見慣れた後ろ姿があった。そこで見てしまった。マルへ、と書かれたとっても綺麗なハート型のチョコレート。金色の綺麗に蝶々結びされたリボン。そっと自分の持っている物に目を落とすと急にそれがチョコレートじゃなくって泥だんごに見えてきた。こんなものオミちゃんに渡せないよ。

縁側で丸くなりながら自分の作った泥だんごを見つめる。なんでだろう?マルの気持ちとオミちゃんの気持ちの形があんなにも違うものになったのはなんでだろう?

「マルはオミちゃんの事が大好き。」

そう口に出してみたけれど不安はどんどん増していった。マルの気持ちが足りないから?そんな事無い!マルは誰よりもオミちゃんの事が大好きだもん!
こんなもの作らなければよかった。きっとオミちゃんも貰ったって嬉しくないよね。今のマルとおんなじ気持ちにさせちゃうよね。
泥だんごなんて土に戻っちゃえ。
お庭に向かって放り投げようと振りかぶった瞬間、
「嫌だ!待ってマル!」泣きそうなオミちゃんの声が聞こえた。
オミちゃん?どうしたの?何かあったの?マルがなんとかするからそんな顔しないで。

「マル、それ、捨てないで。」

これ?なんで?ただの泥だんごじゃないか。

「ばかマル。」

オミちゃんはそう言ってそれをマルから取って大事そうに抱きしめた。

「バレンタインだよね?マルがオミの為に作ってくれたチョコレートでしょ?どうして捨てようとするの。」
「だって、マルの作ったやつ、オミちゃんのより変で、かっこ悪くて」
「どうして比べるの?」
「ば、ばれんたいんのチョコレートは好きって気持ちを形にしたものだって、それなのにマルとオミちゃんの好きの形は全然違うから、」
「好きって気持ちは一緒でしょう?オミはマルのこのチョコレートみたいに形にできない位不器用でシンプルで誰よりも大きい好きの形が一番好きだよ。」
「マルの好きちゃんと伝わった?オミちゃん嬉しい?」
「たっくさん伝わった。オミは今世界一嬉しい!マルもオミの好きの形受け取ってくれる?」
「うん!オミちゃん大好き!チョコレートに気持ちを込めるよりもマルはちゃんと声にして言いたい!オミちゃん大好きー!」
「マルらしいね。よし。オミもマルが大好きー!」

その後二人で一緒に好きを食べた。マルのチョコレートが大きすぎてオミちゃんのお口の周りが真っ茶色になっちゃった。それでもオミちゃんはとっても幸せそうに全部食べてくれた。オミちゃんのチョコレートは今まで食べたどのチョコレートよりも美味しくってマルはちょっとだけ泣いた。ちょっとだけだもん!来年もその来年もずっとオミちゃんと一緒にチョコレートを食べられますように。
オミちゃん。これからもずっと大好きだよ!

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