2
もうすぐ、ばれんたいんだってお父さんが嬉しそうに言ってた。好きな人にちょこれーとをあげるんだって、マルもちょこれーと食べたい。りつのふぉんだんしょこら…よだれがでそう。あ、でてた。マルもオミちゃんにちょこれーとあげたいなぁ…でもマル作り方知らない。りつに聞いたらわかるかな?りつが作り方書いてくれたからマル一人で頑張る。オミちゃん喜んでくれるかな。
「できた!」
できた。良かった。いつもりつがくれるのと少し違う気がするけど「好き」がいっぱいだから大丈夫。のはず。オミちゃんどこにいるんだろ?いろんなところ探してもオミちゃんいない…なんで?はやく渡したいのに。しょんもりしながら台所に戻ったらオミちゃんがいた。オミちゃん!オミちゃん!嬉しくてオミちゃんに駆け寄ろうとして、途中で止まっちゃった。だって、オミちゃん、ちょこれーと作ってる。
「マル、ちょうどよかった。バレンタインだから、あげる」
オミちゃんがきれいでおいしそうな、まんまるケーキをお皿に乗せてマルにくれた。さすがオミちゃん、きれいでおいしそう。でも、マルのは?マルの、きれいじゃない。でも、「好き」いっぱい。でも、きれいじゃない…。きれいじゃないからあげれない?オミちゃんへの「好き」なのに?オミちゃんのはきれい、マルのはきれいじゃない、きたない?あげれない。オミちゃんにきたないのあげれない。
「マル?」
オミちゃんがふしぎそうに見てる。
「オミちゃんありがとう!あとで食べるね!」
ばたばたって急いで台所から出た。これ捨てなきゃ。マルの手の中で崩れたラッピングも、きたない。なんでマルはうまくできないんだろう。心臓のあたりがもやもやして痛い。
「マル!」
「オミ、ちゃ…」
オミちゃんに腕を掴まれた。オミちゃん、なんで追ってきちゃったの?振りほどきたいのに力が入らない。
「マル、それちょうだい」
オミちゃんがマルの手からそれを取ろうとする、からマルの手にも力が入る。だめなの、きれいじゃないから、オミちゃんにあげれないの。ぽろぽろと溢れた涙がオミちゃんの手も、マルの手も、ラッピングも汚していく。やだやだって泣きながら首を振るマルの口に何かが触れた。オミちゃんが優しく笑ってる?
「マル、ちょうだい?」
「う、ん…」
…オミちゃんずるい。そんなのずるいよ。おずおずとオミちゃんに崩れたそれを渡したら、たからものみたいに優しく紐をほどいていく。マルのちょこれーとをぱくぱく食べるオミちゃんは「おいしい」って言う。引っこんでた涙がまたでてきた。オミちゃんはなんでそんなに優しいんだろう。
「…おいしくないよ」
「おいしいよ。マルが作ったからおいしい」
「…オミちゃんのばか」
「うん」
「オミちゃんだいすきぃ…」
「オミも、マルだいすき」
[ 2/6 ]
←
→
TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -