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もうすぐ、ばれんたいんだってお父さんが嬉しそうに言ってた。好きな人にちょこれーとをあげるんだって、マルもちょこれーと食べたい。りつのふぉんだんしょこら…よだれがでそう。あ、でてた。マルもオミちゃんにちょこれーとあげたいなぁ…でもマル作り方知らない。りつに聞いたらわかるかな?りつが作り方書いてくれたからマル一人で頑張る。オミちゃん喜んでくれるかな。

「できた!」

できた。良かった。いつもりつがくれるのと少し違う気がするけど「好き」がいっぱいだから大丈夫。のはず。オミちゃんどこにいるんだろ?いろんなところ探してもオミちゃんいない…なんで?はやく渡したいのに。しょんもりしながら台所に戻ったらオミちゃんがいた。オミちゃん!オミちゃん!嬉しくてオミちゃんに駆け寄ろうとして、途中で止まっちゃった。だって、オミちゃん、ちょこれーと作ってる。

「マル、ちょうどよかった。バレンタインだから、あげる」

オミちゃんがきれいでおいしそうな、まんまるケーキをお皿に乗せてマルにくれた。さすがオミちゃん、きれいでおいしそう。でも、マルのは?マルの、きれいじゃない。でも、「好き」いっぱい。でも、きれいじゃない…。きれいじゃないからあげれない?オミちゃんへの「好き」なのに?オミちゃんのはきれい、マルのはきれいじゃない、きたない?あげれない。オミちゃんにきたないのあげれない。

「マル?」

オミちゃんがふしぎそうに見てる。

「オミちゃんありがとう!あとで食べるね!」

ばたばたって急いで台所から出た。これ捨てなきゃ。マルの手の中で崩れたラッピングも、きたない。なんでマルはうまくできないんだろう。心臓のあたりがもやもやして痛い。

「マル!」
「オミ、ちゃ…」

オミちゃんに腕を掴まれた。オミちゃん、なんで追ってきちゃったの?振りほどきたいのに力が入らない。

「マル、それちょうだい」

オミちゃんがマルの手からそれを取ろうとする、からマルの手にも力が入る。だめなの、きれいじゃないから、オミちゃんにあげれないの。ぽろぽろと溢れた涙がオミちゃんの手も、マルの手も、ラッピングも汚していく。やだやだって泣きながら首を振るマルの口に何かが触れた。オミちゃんが優しく笑ってる?

「マル、ちょうだい?」
「う、ん…」

…オミちゃんずるい。そんなのずるいよ。おずおずとオミちゃんに崩れたそれを渡したら、たからものみたいに優しく紐をほどいていく。マルのちょこれーとをぱくぱく食べるオミちゃんは「おいしい」って言う。引っこんでた涙がまたでてきた。オミちゃんはなんでそんなに優しいんだろう。

「…おいしくないよ」
「おいしいよ。マルが作ったからおいしい」
「…オミちゃんのばか」
「うん」
「オミちゃんだいすきぃ…」
「オミも、マルだいすき」

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