悪逆非道の物語。おまけ
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これは昔々の、遠い世界で綴られた物語の欠片。


【惑いの青年】

民の意見が一致したその夜、青年は夢を見た。忘れていた遠い昔の夢。
王女がその任に就いたとき国民は喜んだ。愛らしく美しい少女の力になりたいと誰もが心を奪われた、青年もその一人だった。しかし現実は違った。愛らしく清らかな王女は鋭い棘に身を包まれた毒花だったのだ。触れようとした者を容赦なく突き刺す華に国民の心は離れていった。
なんて都合がいいのだろう、皆も、俺も。


【過ちの王子】

軍事力に長けた国の王子は、経済力に長けた国の王女と婚約することとなった。昔から知っている、美しい少女と。美しく可憐な少女に密かに心惹かれていた青年は更に少女に近付こうとした。しかし少女は鋭い棘に囲まれた毒花だった。
少女のことを知れば知るほど、自分には何もできないと、助けてやれないと思うようになった。それに、少女の傍には、狂気を孕んだ棘が控えていたから。
俺は、逃げたんだ。


【裏切りの娘】
あぁ、ごめんなさい。貴方を裏切って。でも、どうしようもなく惹かれてしまったんです。
ふとした時に悲しい笑みを浮かべる彼に。優しく笑う彼に。愛しそうに庭の椿を見るやまと君に。
だから、これは罰なのかな…貴方を裏切った私への。
「俺の世界の為に、死んで」
冷たい声。冷たい刃。熱い身体。最期に映った君はわらっていた。
薄れていく意識の中で思い出すのは君と笑い合った記憶ばかり。
ねぇ、この間買っていた指輪、私の為じゃなかったんだね…。



   

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